2014年3月20日木曜日

「堕落論」を読んでみた

昨年の秋ごろ買っておいた「堕落論」(新潮文庫)をようやく読み通した。坂口安吾を初めて読んでみた。

戦前戦中戦後の評論をまとめたもの。坂口安吾にはファンが多いと思うのだが、ぶっちゃけて言うと、読み終わってそれほどの満足感がなかった……。言ってることの6割ぐらいは理解できたと思うのだが、「で?」って思った。そんなに役に立つような知識とか、目から鱗とか、へぇってうなるようなこともない。

表題の「堕落論」は想像していた内容と違っていた。終戦直後の日本人に、政治家に怒りなげく。つっこむ。「俺は天皇制のカラクリに気づいていた」と。
堕落して生まれてくるものがあると。正直に思うまま生きろと。自分の理解力のなさでは、そんな深いこと言ってないなという感想。すまん。

この本で面白かったのは2つ。泥酔して水道橋のホームから転落した小林秀雄を「煮ても焼いても食えない邪教の教祖」とつっこむ「教祖の文学 小林秀雄論」。そして、古代日本史で実は重要なんじゃね?という飛騨について述べる「飛騨・高山の抹殺」ぐらいだった。

高校の現代文の悪夢を思い出した。何が言いたいのか、そもそも言いたいことがあるのか、どうしてもっと簡単にわかりやすく言わないのか?一生懸命がんばって勉強して集中して読んで、四択で正しいものを選ぼうとしても、どうがんばっても8割ぐらいの正答率しか取れない……。8割わかれば十分だと思うのだが、いい大学に入るためには9割だったり9割5分の正答率が必要だったりする絶望。

そんなの予備校で現代文の講師をする人だけでいい。国語の理解力がもっとも大事なのは理解できるのだが、わかりにくい高度な内容をみんながわかるように分解する技術を教えて欲しかった。

日本文化とか、日本の美とか、ブルーノ・タウトとか、ダジャレ逆説とかもういいよ。小林とか、山崎とか中村とか。

2 件のコメント:

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    「堕落論」。読んだと思うけど残念ながら内容は覚えていませんね。松本清張が『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞したとき、強く押したのは坂口安吾だそうです。
    ボクには、坂口安吾は「桜の森の満開の下」などの純文学より裏の顔の方が魅力あります。
    名作「不連続殺人事件」は横溝正史とともに戦後のミステリの復興に大きな力となりました。これを含む数編に巨勢博士という名前ばかりは凄いが、可愛い顔してデレデレしていて夜の女たちに人気の名探偵が登場します。その意外性が好きでした。
    ボクのお勧めは「安吾史譚」。これは松本清張などに影響を与えた歴史考察の書です。天草四郎などは「頭の悪い熱血的テロ少年」とボコボコにされていました。

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    実は「不連続」読もうと思ってました。まだ状態のいい本に出会ってない。
    「小倉日記伝」は好きな作品。長年こつこつ苦労して集めた本やCDが、まとまって安く再発されたときの心境はこの本に近い。
    安吾は戦前から記紀をまったく信用してなくて、かつ辛口。清張と安吾はそんな共通点もあったのか。

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