2014年3月11日火曜日

松本清張「象徴の設計」(1962)

Seicho_shocho
松本清張が1962年に「文藝」連載した、山県有朋をテーマにした歴史小説の1982年の文春文庫版を読んだ。

西南戦争を境に木戸、大久保、西郷と維新の主役が相次いで亡くなった。明治維新から10年、岩倉から新国家明治日本を引き継いだ山県は明治11年の「竹橋騒動」に大きな衝撃を受ける。この事件は近衛砲兵隊の給料への不満が原因だったから。

強い日本を作るために軍備を拡張する必要がある。徴兵令と地租改正は農村を疲弊させた。農民にとっては支配者が徳川から薩摩長州へと変わっただけで、むしろ生活は苦しくなっていた。

板垣の自由民権運動、野に下った大隈の改進党、国会開設の請願、福島事件、高田事件、加波山事件、そして秩父事件といった農民武装蜂起……。

椿山荘から民衆を見下ろす山県の暗い眼差しと不安は密偵を使った民衆の思想の調査と取り締まりへ。
そして、松方緊縮財政とデフレによる米価の下落、地方と農村のさらなる疲弊により板垣と自由党の力も奪ってゆく。

明治日本のニューリーダー伊藤博文に眩しさといらだちを感じつつ、明治新国家のグランドデザインを進めていく山県には、軍人の精神的支柱「軍人勅諭」の構想がだんだんとできあがっていく。ここ、漢文の箇所を読むのに難儀した。

というような、用語だけしか知らなかった中学高校入試日本史の明治期重要箇所の多くを学んだ1冊だった。

松本清張は帝国陸軍をつくった山県有朋に好意を抱いていたか?そんなはずはないと思う。山県のつくった明治日本がその後の間違いのすべての元凶。山県がいなければ後の日本の姿は大きく変わっていたかもしれない。そしてこの国の現在の宰相も長州出身だ。日本はどんな未来を選択してゆくのか……。

PS. みうらじゅんは松本清張の作品をほぼ読破しているらしいことを最近知った。すげえ、まじ尊敬。自分は正直あんまり興味の持てない清張作品も多いので、全部読むのは無理だ。

2 件のコメント:

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    みうらじゅんって絵を描いたり、リリー・フランキーとやらしい話をしているだけの人じゃないんですね。
    私は長州出身者(今の首相みたいな人)が政治家になると、リーダーシップはいいんだけど、戦争に加担したがるからどうなるんだろうな…と最近感じるようになりました。リーガルハイ風に「断固拒否しま〜す!」と言ってやります…もし赤紙を貰ってもその場でジッポー火炙りの刑にしてやります、真っ先に若い男たちが駆り出されるんですから…。

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    ラブ&ピースだな

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