年末から年始にかけてずっとこれを読んでいた。梶井基次郎の「檸檬」(新潮文庫版)。この人は三校時代に患った肺の病にずっと苦しめられていたために、絶望的なムードが付きまとう。享年31歳。
これ読んだの高校生のとき以来。当時はまったく理解できなかった。大人になって読めば理解できるかも、と思ったのだが、やはり難解。高校生にとって大正から昭和にかけての人々の生活がイメージできないというのに、こういった作品を現代文で出題するとかどんだけ嫌がらせなんだ。
短編20作品収録されているのだが、どれも特にストーリーという物がなく、主人公の心理と独白が続く。当時は肺結核は不治の病。正岡子規もそうであったように、結核を患った者は窓の外の季節と時間の変化を、冴えた頭脳と観察眼、優れた日本語能力で独特な描写をする。詩を読んでる感じ。
この人は意外にもエンジニア志望の理系だった。三校(工学科)を荒んだ生活で落第しながらもやがて東大英文科へ。病身で多くの文学作品を読み漁る。エリートでありながら病気で仕官も就職もできずに街をさ迷い歩くとか、現代の若者も精神を暗く圧迫するものに苦しんでるところは同じかもしれない。
表題作「檸檬」は京都が舞台。高校時代に読んだときは「丸善」とか出てきたのでてっきり東京だと思っていた。この作品はまだポップ。
「城のある町にて」「雪後」はドラマを見てるよう。
「泥濘」は本郷御茶ノ水あたりが舞台。「桜の樹の下には」を読むとやはり変わった感性を持った人だと感じる。高熱にうなされながら書いたような作品。
どの作品も3行読んだらまた戻って…というぐらい、なかなか頭に入ってこない文章だった。すべての作品が読んでよかったとまでは言えない。
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最近気に入っているコミックに「文豪ストレイドッグス」というのがあります。
文豪の名を借りた超能力バトルもので、角川書店から3巻まで出ています。
主人公の少年は虎に変身する中島敦。必殺技「人間失格」の使い手で自殺癖のある太宰治。その相棒に国木田独歩。彼ら武装探偵社の探偵が港湾マフィアの刺客で必殺技「羅生門」の使い手・芥川龍之介らと壮絶な戦いを繰り広げる。出てくる探偵は、宮沢賢治、江戸川乱歩、谷崎潤一郎&ナオミなど。敵は広津柳浪、立原道造、樋口一葉などなどの異能力者。
梶井基次郎は檸檬型の爆弾を使うサングラスのテロリストで登場。すでに「丸善爆弾事件」を起こしている理屈っぽい危ないアンチャンです。初めは威勢よかったのですが、私の気に入っている与謝野晶子お姉さまにボコボコにされてしまいます。
基次郎のは小説というよりは詩的散文なのでしょう。妄想癖もあって、桜の木の下には屍体が埋まっているとか、猫の耳を切符切りでパチンとやるとか、不気味でありながら、どこか共感できそうなところが怖ろしい。「闇の絵巻」や「Kの昇天」が好き。
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檸檬爆弾!それは相当に変なマンガだ。日本はキリストと釈迦が一緒に住んでたりする変な国。
「闇の絵巻」も、やがて自分は死ぬっていう人しか書けない感覚だと感じた。猫耳を切りたいって発想を持ってる人も初めてだった。