貴志祐介「硝子のハンマー」(2004)を読む。オビに第1回山田風太郎賞受賞とある角川文庫平成23年8刷。これもBOで110円購入。
年の瀬の日曜の昼下がり、介護事業を展開し介護ロボット開発を進め株式上場を目指していた会社の老社長が、ビル12階フロアの社長室で撲殺されて発見。社長は開頭手術から復帰したばかりで頭部が衝撃に弱かった。
防犯カメラ映像を調べても侵入したものがいない。唯一物理的に犯行が可能だったとみなされた専務(こちらも老人)が逮捕。
専務の弁護を担当する女弁護士・青砥が伝手をたよって防犯セキュリティの専門家榎本径(過去に難事件を解決した過去がある?)に専務以外に犯行が可能だったのか調査を依頼。
防犯スペシャリスト榎本からありとあらゆる防犯とそれを破るテクニックが解説される。
ありとあらゆる可能性が浮かんでは消える。防犯カメラや鍵の知識を持った榎本は青砥と協力し警察内のコネで詳しい捜査情報を得たり、潜入テクニックを駆使し違法な住居侵入などによって情報を得る。
動機がわからないし、社長室に入ることができたのはドアで繋がった部屋で仮眠してた専務(実は睡眠薬を盛られていた)しかいない。
以上が第1部。正直、なかなか真相へとたどり着けない。ずっとぐるぐるさ迷う。
第2部は犯人主観。悪党たちに両親を借金漬けにされ財産を奪われ大学進学も諦め、名前を変えて闇金ヤクザから逃亡した少年(青年)の壮絶半生。
なんだか東野圭吾の重厚な刑事ドラマの雰囲気。ヤクザに人生を狂わされた青年の完全犯罪計画ノワール。不正な金を持った老人から金を奪い取って何が悪い?その金で闇金ヤクザに反撃したい!
犯人は読者に示されたのだが、最大の衝撃はどうやって殺害したのか?だ。おそらく介護ロボットを何らかの方法で遠隔操作したはずだが、そのロボット自体には人を殺害できるような能力はない。では一体どうやって撲殺したのか?
たぶん世界でも類を見ない独創的で斬新な殺害トリックに驚嘆!
バレるはずがないと思われた完全犯罪だったのだが、防犯コンサルタント榎本がすべてお見通し…。
あまりに不幸な境遇なのでついうっかり犯人青年に感情移入。読んでいて辛くてこの犯人を応援したくなる。
バレずに完全犯罪を成功させたほうがノワールとしてスッキリ爽快な読後の満足感を得られただろうと思うのだが、しかし作者と榎本は「殺人は決して許さない」という態度。
なのに榎本はそれほど高い倫理観を持っているわけでもない…というのは意外なラスト。
読後の満足感が高い。これも十分にオススメできる一冊。
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