2025年7月22日火曜日

田中啓文「シャーロック・ホームズたちの冒険」(2013)

田中啓文「シャーロック・ホームズたちの冒険」(2013)を2016年創元推理文庫版で読む。
「歴史に名を残す人々は、誰もがみな名探偵だった!?」という奇想天外ミステリー短篇集。

「スマトラの大ネズミ」事件
シャーロック・ホームズの知られざる事件。ワトソンの未発表原稿。ホームズにそれほど詳しくないという筆者の巻末あとがき弁明によれば、ホームズと相互に矛盾しないように1行ごとに確認が必要で、通常の3倍の時間がかかったそうだ。
事件現場には生首のみ残されて…という怪奇な事件だが、その真相も怪奇ホラー。

忠臣蔵の密室
吉良邸に討ち入った大石蔵之介。すでに炭小屋で吉良上野介は死体となっていた。周囲には雪が積もっていて密室なのだが。
蔵之介の妻りくが手紙のやりとりだけで謎を解く。

名探偵ヒトラー
マルティン・ボルマンの手記による名探偵ヒトラーのエピソードというてい。厳重警備の要塞のような部屋から「ロンギヌスの槍」が盗まれた。ヒトラーが解決という話。
ヒトラーを頭のいいヒーローのように描くなと批判されそうだが、捜査の過程で無実の掃除夫、料理人、SS将校たちを次々と射殺処刑。それは酷い。たぶんこのパターンは「名探偵スターリン」でも可能かと。

八雲が来た理由
なんと小泉八雲が友人西田千太郎といっしょに妖怪騒ぎの謎を解く。しれっと嘘が書かれてて、どこからどこまでが史実なのかわからない。

mとd
神出鬼没の怪盗ルパンが酷薄な美術コレクター伯爵から「サンラーのスカラベ」を盗むと予告。ガニマール警部らの追跡をものともせず友人のルブランとの冒険活劇。

夏休みの1日にささっと読むのに適した楽しい短編。まるでパスティーシュ同人誌のようで感心した。

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