2025年1月15日水曜日

トーマス・マン「トニオ・クレーゲル / ヴェニスに死す」

トーマス・マン「トニオ・クレーゲル / ヴェニスに死す」高橋義孝訳の2タイトルを収録した新潮文庫で読む。
これ、コロナ期積読本。BOで55円で売られていた。挟み込まれたスピンを見る限り、ほぼ新品同様の令和元年63刷。

トニオ・クレーゲル(Tonio Kröger 1903)
トニオ少年は同じ学校に通うハンス・ハンゼン(金髪碧眼で美しい)と一緒に帰る約束。しかしハンスは湿った風が強いから散歩に適さないから他のクラスメートと一緒に帰るところだった。トニオもハンスも町の名望家の父を持つ。名門校なのかもしれない。

トニオの母は南国生まれ。だからトニオなどというドイツ人らしくない名前。喧嘩早く孤立しがち。トニオは美しい優等生ハンスくんに羨望と嫉妬しつつ友だちになりたいと願う。

この時代のドイツ少年が学校帰りにどんな話題をしているのか興味あったのだが、なんとシラーの戯曲「ドン・カルロス」w うそだろ。今の16歳はマンガか韓国アイドルかポケモンカードバトルだろ。
トニオくんは詩をノートに書いている。え、そのことだけで教師や同級生たちから不評?!いったいどんな詩なんだ。16歳詩人なんて自分が高校時代はまったくいなかったぞ。

そしてトニオ16歳が密かに恋する娘がインゲボルク・ホルム。フランス語でのダンス講習で一緒に踊るのだが、笑われ恥をかく。
父が死ぬと商売をたたんで母は再婚。トニオもイタリアへ。やがてミュンヘン。もう青年?
リザヴェータという女流画家に意味のわからない長広舌をぶつのだが「あなたは芸術に迷い込んだ俗人」と看破され北へ。

故郷のホテルで指名手配の詐欺師と間違われて凹むw そしてデンマークへ。かつて憧れたハンスとインゲのような若者を見て、話しかけようかとも考えたのだが何もせずに去る。そしてリザヴェータに手紙を書く…という小説。
読んでて辛い孤独青年の彷徨遍歴。自分も少なからず思い当たる。青年を孤独にさせるのはよくない…って思った。

ヴェニスに死す(Der Tod in Venedig 1912)
こっちはヴィスコンティの映画で見たやつなので内容はなんとなく知ってる状態。
こっちもざっくり説明すると神々しいまでの美少年に羨望した中年男性の孤独死。
いや、読んでて辛い。青年にも中高年にも孤独はよくない。

武漢肺炎のことを思った。どう言い訳しようとも、現地で危機を伝える医師を妨害し罰した罪と人類への罪は逃れられない。コロナ期間はカミュ「ペスト」でなく、マン「ヴェニスに死す」のほうが読まれるべきだった。

読んでてすごく三島由紀夫っぽいなと感じてた。内容も文体も。三島がトーマス・マンの影響を受けてることは国文学に詳しい人には常識らしい。知らんかった。

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