文芸春秋社から出てる「OSO18を追え "怪物ヒグマ"との闘い560日」藤本靖(2024)を読む。
[OSO18]とは、北海道東部、標茶町、厚岸町において2019年から2023年にかけて66頭の牛を襲い、怪物として世間を恐怖に陥れたヒグマのコードネーム。2019年7月16日、標茶町オソツベツの牧場で最初の乳牛被害が出た。前足の幅が18㎝。なのでOSO18。
これ、リアルタイムでニュースを追ってたし、NHKスペシャルも見た。
あの番組で陣頭指揮を執っていた著者は猟師ではなく、自動車整備を本業としNPO法人「南知床・ヒグマ情報センター」理事で主任研究員で標津町町会議員。この本はこの人の時系列的な手記。
丹精込めて育てた牛が一晩で何頭も殺されたのではたまらない。牧場主にとって精神的にも経済的にも大損害。
そして集まった人々。北海道開拓以来、ヒグマの知識をため込んだ猟友会ハンターたち。経験と知識を持った専門家ならなんとかしてくれそう。だが、それでも今回のヒグマ被害事件は異様だ。
襲撃した牛の内、殺されたのは半分。もしかして、牛を狩ること自体を楽しんでる?それは恐怖。
ヒグマは慎重で賢い。「クマの止め足」という言葉を初めて聞いた。ヒグマは足跡を追いかけてくるハンターを、足跡のつかない草むらに潜んで待ち伏せ攻撃してくるらしい。それは怖ろしい。
冬眠している熊は前後不覚になっているわけでなく、ただウトウトした状態らしい。なので足音たてて巣穴に近づけば、穴から出てきて人を襲うこともあるという。冬だから安心というわけでないのか。
あと、クマは自分より高い位置にいる相手に対しては、攻撃を躊躇する習性があるらしい。なので、逆に相手が自分より下にいる場合は積極的に襲われると見るべき。これはもしもの時に使えそうな知識かもしれない。(熊と出会わないことがベストだが)
夜間は発砲できない、括り罠は特別な許可が必要などの法規制を逆手に取るように、OSOはハンターたちの追撃をかわしていく。
やがて藤本氏も疲労。なんと悪性リンパ腫で入院。だが、病床に電話。どうやらOSOが釧路町で仕留められたらしい…。
品種改良され栄養価に富む牧草の普及によって、餓えずに越冬できるエゾシカが増え、駆除されたエゾシカが投棄されたことで肉食を覚えてしまったヒグマがOSOだった。やはり人間の行動がヒグマの生態に影響を与えていたのか。
令和日本のシリアルキラー魔獣ヒグマ追跡のリアル。この追跡の記録は貴重な遺産。
結末はガッカリかもしれないが、道東で牛を育てて暮らしてる人にとっては、誰が退治してくれてもかまわない。とりあえず一安心。
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