2024年11月13日水曜日

泡坂妻夫「写楽百面相」(1993)

泡坂妻夫「写楽百面相」(1993)を平成8年新潮文庫(初版)で読む。これ、8月にBO110円購入。

泡坂妻夫(1933-2009)は「しあわせの書」(未読)の他はあまり読まれていないらしく(?)、BO100円棚であまり見かけない。
この本は存在を知らず、110円で買えてラッキーと連れ帰ったのだが、今年の9月に創元推理文庫から復刊したらしい。

松平越中守定信の質素倹約令によって不景気の寛政江戸。川柳句集などの貸本出版業若旦那・二三は、馴染みの卯兵衛に「年が明けたら世帯を持とう」と持ち掛けるのだが、卯兵衛は「旦那がいるから」と断られる。ふと屏風に貼ってある役者絵が強い印象に残る。(二三が男で卯兵衛が女の名前で混乱する。)

この卯兵衛は後に行方不明。方々に旦那は誰か?と引っ越し先を聞いて回るのだがわからない。その後、土座衛門となって二三本人が発見。

寛政年間の江戸文化人の関心事は芝居。芝居小屋も寛政の改革のせいで不興。質素倹約に反した山東京伝や役者には手鎖などの刑罰。蔦重(蔦屋重三郎)も資産の半分を没収されるなど圧迫。

そういえば来年のNHK大河ドラマは蔦屋重三郎。だから今年の秋復刊されたのか。
この本を読む限り、蔦重の周辺には十返舎一九、葛飾北斎といった江戸スーパースターたちもいたらしい。もしかするとドラマには松平定信、蜂須賀重喜といった人々も登場するのかも。

この蔦重が今で言うメディアミックスやり手出版業者。角川が映画と連動して本を売ったように、役者絵の大首絵を同時に出してたくさん売ろうという業者。今で言ったら幻冬舎とかか。
二三は葬式や蔦重サロンに顔を出して世間話。やがて、謎の絵師・東洲斎写楽の正体に気づいていく。さらに思わぬ芝居と公儀と公家方スキャンダルについて書かれた発禁本へと発展。寛政江戸ハードボイルド。

三田尻で急死したという尾上菊五郎(二代目)と公家方のスキャンダルって史実なの?!と思って調べたのだが、これは泡坂の創作?
この本をスラスラ読める人はよほど時代小説や江戸の文化と風俗に詳しい人。自分もわからない単語や人物が多数登場。
光格天皇と幕府の尊号問題とか、延命院スキャンダルとか、東京中を散歩してた自分ですら知らなかった。
大人の読み物を読んでる気分だった。自分としては面白かった。

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