井上真偽「アリアドネの声」(2023 幻冬舎)を読む。この東大卒作家の本を読むのはこれが2冊目。
自動運転やドローンの技術によって運行してる地下5階スマートシティでの巨大地震と浸水。事業を推進してきた知事の障碍者姪がたった1人取り残される。
ドローン操縦士の主人公青年と救助チームが、目が見えず耳が聴こえず喋れない遭難者をどうやって救出するか?というデザスターパニックドラマ?!
「ポセイドン・アドベンチャー」とかアーサー・C・クラーク「渇きの海」を連想。夕木春央「方舟」と似た設定かもしれない。
浸水と漏電、二酸化炭素濃度、迷惑系ユーチューバーとSNS世論、主人公の幼少時に兄を亡くしたトラウマ、電波が届かずドローン喪失、などなどのサスペンスを盛る。
救助対象が白杖を持ってるのみ。どうやってファーストコンタクトを?なども含めて、ハラハラドキドキ要素はたくさんあった。
だが、ほぼ主人公青年主観のみから描かれる。全盲聾唖失語症(各章の冒頭でヘレン・ケラーの言葉を引用)という三重の障害を背負った遭難者側の内面心理と駆け引きを双方から描けばもっと面白くできたんじゃないか?乙一「暗いところで待ち合わせ」のようにすればもっとスリリングでは?と考えながらページをめくる。
しかし、救助する側が遭難者のハンディキャップの度合いはどれほどか?実はちょっとは見えていたり聴こえてたりしない?といった疑義を持つところが新しいっちゃ新しい。そしてラストで明かされる衝撃の真相!これが著者の今作におけるアイデア。
「恋と禁忌の述語論理」を読んだときのような衝撃と興奮と「参りました!」という感じはなかった。
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