2024年9月29日日曜日

ローマ人の物語「勝者の混迷」(1994)

塩野七生「ローマ人の物語」の新潮文庫版6巻7巻に相当する「勝者の混迷」上下巻(1994)を読む。

ポエニ戦争後の地中海の覇者ローマを描く。
戦場から故郷に帰ったローマ兵たち。零細な家族農園は立ち行かなくなっていた。その一方で奴隷を使役する大農園はますます焼け太る。その格差500倍にまで開いていた。
農業国ローマ。食えなくなった農民たちは失業者として都市ローマへと流入。そして有産階級ローマ市民の減少。それはそのまま徴兵義務を持つローマ市民の減少、ローマ軍の質と量の減少。初めて奴隷の叛乱も起こった。これは改革が必要だ。

第1章ではティベリウスガイウスグラックス兄弟を扱う。
スキピオ・アフリカヌスの孫グラックス兄弟って高校世界史の教科書にも出てきたはずだけど、ティベリウスは護民官としてわずか7カ月?ガイウスは2年?農地改革に乗り出すも反対派暴徒に殴り殺された?ローマ人は野蛮。若くして短い期間で殺されたために当時の肖像が残されなかった。

農地改革、土地改革は敗戦とか革命とか、圧倒的圧力がかからないとできっこない。ローマ市民は自分と関係ないことで法を変えようと思えなかった。(いまだに少子化対策に本腰入れない現代日本も似てる)

第2章、名門の出でなく軍人たたき上げのガイウス・マリウスは50歳で執政官。そして軍制改革。

ローマでは17歳から60歳までが徴兵義務。しかし家族を養う資産のないものは免除。徴兵が不足するたびに資産ボーダーを下げて行ったのだが、するとローマ兵の質が低下。
じゃあ、志願兵システムに変えよう!失業対策にもなるし。これは下層市民からも失業者からも歓迎された。

志願兵制ローマ軍最初の戦いが、テウトニ族とキンブリ族の侵入者ゲルマン人。
人間とは、食べていけなくなるや必ず、食べていけそうに思える地に移動するものである。これは、古今東西変わらない現象である。 
食べていけなくなった人々の移動が、平和的になされるか暴力的になされるかは、たいしたちがいではない。いかに平和的に移ってこられても、既成の社会をゆるがさないではおかないがゆえに、民族の移動とは、多少なりとも暴力的にならざるをえないのである。この難問に直面するたびに、ローマ人がどのようにそれに対処していったかは、ほとんどローマ史そのものと重なってくる。
移動侵入してきたゲルマン人10万は新制ローマ軍2万が粉砕し全滅させた…。

イタリア各地の「同盟者戦役」、小アジアでの「ミトリダテス戦役」、そしてローマ国内での反乱。その勝者がルキウス・コルネリウス・スッラ。任期無制限の独裁官に就任。敵対者は粛清。

スッラ体制後、スパルタクスの叛乱も起こる。資産家軍人クラッススと新たな英雄ポンペイウスの登場。そしてポントス王ミトリダテスの死。キリキア海賊の征討。総司令官ルクルスの活躍もあって、ローマはさらに勢力圏を広げる。

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