樋口有介「ぼくと、ぼくらの夏」(1988/2007)を読む。これがこの作家のデビュー作。昨年10月にこの創元推理文庫版で出て以来、いちばん読まれている樋口有介作品ではなかろうか。表紙イラストがこの作品の雰囲気にぴったりハマっていて感心しかない。
主人公の戸川春一は深大寺学園高校の2年生。見た目のだらしのない父は調布警察署の刑事。そんな父から同級生が稲城大橋から多摩川に飛び降りて自殺したらしいことを知らされる。文庫表紙は稲城大橋だったのか。
靴は脱いでそろえられていて短い遺書もあったことから自殺として処理。だが戸川くんは「そんなのおかしくない?」と調査開始。同級生でテキ屋で鳶職の酒井組の娘・酒井麻子と一緒にクラスメートの死とその真相を捜査。するとさらに同級生女子がひき逃げ事故死。
この二人のやりとりがおしゃれ。樋口有介の作風は会話がハードボイルドスタイルな赤川次郎。
「戸川くんは、どうして友達をつくらないの」「喋るのが、たぶん、面倒なんだろう」「どうして」「喋ってもけっきょくは、なにも通じない気がする」「懐疑論者みたい」
戸川くんのスカシた感じが異常。
あと、高校2年生の夏休みのけだるさがよく出てる。
父がビール飲みながらジャイアンツ戦とか昭和。小松が投げ篠塚が打つ中日巨人戦。巨人が勝つか負けるかは原が打つか打たないかにかかってる。
不良高校生はディスコへ行く。あと、高校生が酒飲むのもタバコ吸うのも普通。え、担任の先生の前なのに……?!
この本は樋口有介読者の間で言及されることが多いので期待してはいたのだが、自分としてはそれほど驚きも感心もしなかった。身近で不審死が起こる夏休み青春小説としてのみ有用。
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