2024年6月8日土曜日

平谷美樹「虎と十字架」(2023)

平谷美樹「虎と十字架 南部藩虎騒動」(2023 実業之日本社)を読む。何やら自分の好きな歴史ミステリー風らしいので手に取った。著者のことは何も知らない。「ひらたにみき」だと思ってたら「ひらやよしき」と読むのが正しいらしい。

「徳川実紀」巻八の寛永三年(1626)此年条に、「南部信濃守利直は、慶長十九年に駿府城にて給わりし虎二疋有りしが、其の一は去年死しければ、其の皮をはぎて、利直父子鞍帕につくり、許しを得て御上洛供奉の時より用ゆ」とあるらしい。この虎はカンボジアから家康に贈られ、南部利直は大坂夏の陣後の元和元年八月に拝領したらしい。この二頭の虎は乱菊丸、牡丹丸と名付けられ城内で飼われたと記録にあるらしい。

その短い記録から作者が自由に創作した娯楽歴史小説?

山道を逃げる女二人に追手。そして虎に与えられる囚人の屍肉。なんと虎目線。何かいつもと違う。死体に腐臭を警戒し、開け放たれた扉から虎は逃走。
徒目付の平四郎の機転によって一頭は捕らえられたのだが、もう一頭は藩主の三男の若君によって射殺。

虎籠番の1人は責任を取って自刃したものと思われたのだが、どうやら眠り薬を飲まされ殺されていた?何やら急に陰謀の臭い。
若殿の重直は狩り好きで日ごろから「虎を狩ってみたい」などと言っていた?!
南部藩でも切支丹は取締対象。捕らえられ仕置きされた死肉を虎に与えられていた?それは恨みを買うに違いない。遺体をとり返そうとした切支丹の線もある。

米内平四郎がいろんな人々に聞き込み調査。すごく有能。論理的な判断ができる人材。
平四郎が名刑事というよりも、ほぼ下山事件を追うジャーナリストのよう。虎籠を開けて虎を逃がして、最終的に得をするのは誰か?

クライマックスがわりと派手。ええぇつ?!そう来る?
いや、楽しかった。面白かった。よくこんな壮大なミステリー時代劇ドラマを創作できる。天才かよ。ミステリー小説としても十分に面白い。映画化希望。

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