吉村昭「零式戦闘機」(昭和43年)を読む。新潮文庫平成16年42刷で読む。
もうしわけないが、BOで何か読みたい本はないか?と物色していてこいつを見つけた。110円だった。
読み始めてすぐに「あっ」と思った。三菱名古屋航空機製作所から大きな荷を牛車が運び出すシーンも、東京帝大工学部航空学科を卒業したばかりの設計技師・堀越二郎が海軍の人々と会議をするシーンとか、試作機のテストで空中分解するシーンだとか、これ全部ジブリアニメ「風立ちぬ」で見たやつだわ。
堀越二郎たちがつくった九六式艦上戦闘機の性能が、外国製航空機と比べても圧倒的にすごくて、海軍の偉い人たちもにわかに信じられなくて、計器の故障では?と疑うほど。
零式になると中国大陸に投入されるのだが、戦闘機としての最初の実戦があの重慶爆撃のとき!?それ、知らなかった。
昭和15年から16年にかけて、進藤大尉率いる九六式艦上戦闘機と零式戦闘機隊が重慶、成都、昆明で撃墜した中国空軍(主にソ連製イ15、イ16)が、撃墜162機、撃破264機なのに対し、日本が失ったのは零式2機のみって圧倒的すぎる。
アメリカ人の空軍顧問が報告するも、航空機後進国日本に突然そんな戦闘機が現れたことを本国は信じないw それぐらいありえないほどの性能と完成度。
そして真珠湾攻撃。マレー上陸作戦、シンガポール、フィリピン。アメリカ空軍、英国空軍にも完勝。ジャワ沖海戦、スラバヤ沖海戦、バタビヤ沖海戦、パレンバン上陸。
海軍航空隊は開戦からジャワ作戦までに、米英蘭三国の空軍機565機を撃墜。その83%が零式戦闘機によるもの。零式に対応できる戦闘機を英米は1機たりとも持っていない。プライド完全崩壊。
ミッドウェイ海戦では敗けはしたが零式戦闘機はまだ優性。しかし、アリューシャン作戦中に、ついにほぼ無傷の不時着機が米軍の手に渡ってしまう。
ゼロファイターと恐れられた神秘の機体が敵に調べ上げられ、高高度性能と防弾性に劣る零式戦闘機の欠点もバレる。零式に対しては二機で闘う戦法を編み出す。そして開戦7か月で日米間の圧倒的物量差が見え始めた。
ガダルカナル―――そのソロモン群島の小島を中心に展開された日米両軍の激突は、戦争そのものの不気味な姿を露呈させたものであった。戦争という巨大な生き物が、おびたたしい人命、艦船、航空機その他多量の資材を貪婪に果てしなくのみつづけたのだ。
そしてついに悲壮と絶望の体当たり攻撃へ。制空権を失い本土空襲。
航空機の輸送には牛馬しかなかったということは意外だった。戦争では牛馬も犠牲になっている。
効率的な輸送に頭を悩ませ、ペルシュロン馬を購入する過程で仲介人と岩手県の間で公定価格違反の訴訟になっていたことを初めて知った。
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