2024年5月29日水曜日

八木澤高明「日本殺人巡礼」(2017)

八木澤高明「日本殺人巡礼」という本があるので読み始めた。2017年に亜紀書房より刊行の後、2020年に集英社文庫化。著者は元写真週刊誌カメラマンのライター。

文庫表紙がすごくグロテスクに見えるのだが、これは山口県周南市金峰の郷集落で発生した連続殺人事件の犯人・保見死刑囚が自宅に掲げていた死神のようなお面。現地を訪問巡礼した著者による撮影。

有名な殺人事件の現場を巡礼するという悪趣味なルポだが、筆者によれば、殺人を犯す人としない人の境界を知りたかったとのこと。それはよほどの覚悟がなければできない仕事。

2013年に山口県周南市8世帯14人の集落で5人殺され放火された「現代の八つ墓村」事件を自分は知らなかった。岩国や川崎で左官職人をしてた保見は老父の介護のために限界集落へUターン。「よそ者」として孤立を深めていく。事件時には63歳で集落最年少。

著者は父親が田畑を持たない竹細工職人であったことに注目。
集落の人々は口をつぐむが、これはやはり差別問題があったんだろうなと。
もしやサンカでは?しかし平家落人伝説があるらしい。

北関東に注目した著者。上州は江戸の昔、博徒が集まった土地柄。
1999年の埼玉愛犬家連続殺人事件の関根死刑囚の父親は秩父市の下駄屋。やはり賤業とされた歴史。
本庄保険金殺人の八木死刑囚も少年時代は両親から酷い扱い。
そして一番の暗黒は連続幼女誘拐事件。他にも未解決の女性誘拐殺人事件がある。

2005年に今市市で当時小学1年の吉田有希ちゃんが常陸大宮市で遺体となって発見された事件。勝又受刑者は冤罪の可能性が高い?勝又は日本人と結婚した母親が台湾から呼び寄せた帰化人らしい。
偽ブランド品販売の別件で逮捕。威圧的な取り調べで自白に追い込むいつもの警察による簡単なお仕事。

勝又は犯人しか知りえない秘密の暴露を自供していない。警察発表に基づくNシステムに勝又のクルマが映っていた件も宇都宮市内のものだけで、裁判の争点にもなっていない。警察がこれまでにやらかしてきた冤罪と同じ臭いがする。
遺体から採取されたDNAが栃木県警元捜査幹部のものだった件はケッサク。ならば犯人はその幹部やろがい!足利事件の冤罪で受刑者となった人のことを想わんかい!

この本、ずっと民俗学的。1988年の綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件の舞台となった綾瀬の住宅地を取材。この土地が江戸の昔は住むものもいない湿地帯。浪人が流れ込み盗人がはびこった歴史を説明。流れ者の地で住民の血縁が薄い土地での凶悪犯罪。

東京イーストエンドから、切り裂きジャック事件のロンドン・イーストエンドへ。境界が犯罪の温床になるのは世界も同じ。産業革命の社会の歪み。日本も農村と都市。高度経済成長の歪み。地方から上京し孤立を深めて通り魔大量殺人の日本。

北海道倶知安町でネパール人夫が日本人妻と生後6か月の娘を殺害し川に捨てた事件を取材。
著者はネパール人夫の不可触民の貧しい実家も取材。この男はすでに結婚してたしレイプ事件も犯してた悪人。家族は男をかばうし、拘置所で面会しても自分は被害者だと自己弁護。

日本の労働者不足を外国人で補うのはこのような悲劇をたぶん爆増させる。酷薄な日本に幻滅し、孤独を感じ、その怒りの矛先は日本の一般市民に及ぶ。
外国人が犯罪で日本人に損害を与えたら、自民党と経団連の偉い人は無限責任で連帯保証人として損失を補填してほしい。すでに埼玉の川口は制御不能。永住権のために日本の女が狙われる。クルド人の連帯保証人は誰?

さらに吉展ちゃん誘拐事件の小原保、永山則夫、貧民窟、ドヤ街。故郷の農村が貧しくなければ東京で出稼ぎ仕事なんてしなくて済んだ人々。読んでいてひたすら気が滅入る。
秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大がトヨタ自動車系の期間工だったことはもっと語られるべき。
この本を読むと、日本って思ってた以上に酷い国。

著者は和歌山カレー事件の林眞須美の故郷の漁師集落も訪問。やはり民俗学的に眞須美の性格へ深堀。
自分はまだこの人を犯人だと確信できていない。どこかに真犯人がいて林一家も含めて狙われたのかもしれない。人を殺せる毒物を一般人が容易に入手できる環境さえなければこのような凶悪犯罪は起きてなかった。

さらに、5人を殺害した詐欺師西口彰の故郷も訪問し話を聞く。西口が潜伏キリシタンの末裔だったことを踏まえて、話は麻原彰晃にまで。

戦後の食糧難の連続強姦殺人犯・小平義雄。そして差別が産んだ金嬉老事件。
え、1968年2月に金嬉老がライフル銃とダイナマイト持って立てこもった寸又峡温泉のふじみや旅館は2012年に廃業するまで、事件現場の部屋に泊まれたのかよ。事件に関する展示室があって金嬉老の肉声テープとか聴けたのかよ。

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