2023年6月19日月曜日

宮澤賢治「風の又三郎」

宮澤賢治「風の又三郎」を昭和14年羽田書店(日本橋區)版の昭和49年ほるぷ復刻版で読む。これは7年ぐらい前にBOで250円で購入。以後今日まで積読してた。

宮沢賢治(1896-1933)の死後に発表された作品群の中から、子ども向けとしてまとめて出版されたものはこれが最初らしい。坪田譲二が解説を、小穴隆一が挿絵を描いている。

この一冊に「風の又三郎」「セロ弾きのゴーシュ」「オツペルと象」といった有名作品を含んでる。自分はどれもまだ読んだことがなかった。なので連れ帰った。

宮澤賢治の序文として、あの有名な「雨ニモ負ケズ」の後半部分「野原ノ松ノ林ノ䕃ノ~」以降が書かれてる。では掲載作品を順に読んでいく。

「貝の火」
兎の子ホモイが川で溺れて流されてるヒバリの子を助けたら風邪を引いて寝込み、後日ヒバリの母子から助けてもらったお礼に「貝の火」という珠を渡される。これを持っていると獣の王のように振舞うことができる。ほぼライオンキング。

この話がまるでピンとこない。兎は増長してるように思える。兎父がたしなめる。そのたびに「貝の火」が美しく輝いているかどうか確かめるのだが、やっぱり不思議に美しく珠の中で火が燃えている。期待に反して何かの教訓のようなものは得られない。
自然の風景描写が素朴で独特。都会の集合住宅で育つ子どもたちにはイメージできないことかもしれない。自分は「すずらんの実」がイメージできなかった。

「風の又三郎」
宮澤賢治の代表作のような扱いなのに、自分は今日まで一度も読んだことがなく、まったく内容を知らなかった。きっと、謎の転校生が村の小学校にやってくる話だと思っていた。

夏が終わって新学期の初日、風の強い日にやってきた赤い髪をした真っ黒な目の高田三郎が実はまったく普通の子。
村人小学生たちの側が勝手に「又三郎」だと思ってる。一緒に遊ぶ日本の村の子どもたちのスクールデイズ。そしてまた、急に他所へ転校していく。

あの有名な書き出し
どつどど どどうど どどうど どどう
ああまいりんごも吹きとばせ
すつぱいりんごも吹きとばせ
どつどど どどうど どどうど どどう
一体どんな節とリズムで読むのが正解なのかわからない。勝手な節をつけると怒られそうだが、どう読んでも自由ではないか。ダメ出しされるいわれはない。

「蟻ときのこ」
この時代のこどもたちはもれなく兵隊ごっこ。急にそこに出現した真っ白な家のようなもの(じつはきのこ)を中佐に報告しなければ…という、短い短編。

「セロひきのゴーシユ」
楽団で一番下手で起こられてばかりのゴーシユは疲れて家に帰って一心不乱にセロの練習。すると、次々と動物が訪ねてくる。ゴーシユは怒ったて追い返したり、優しかったり。
そうするうちに上手くなってる?!これも期待するように話がすすまない。

「やまなし」
川底のカニの兄弟目線の風景スケッチ短編。山梨県とはまったく関係がない。

「オツペルと象」(現在ではオツベルが正しいとされている)
まるでやりがい搾取の経営者と労働者。白い象さんを調子に乗ってこき使ってる。象さんかわいそう。
やがて象たちが団結し革命蜂起。時代的にアカとみなされなかったか心配になりながら読んだ。

いやあ、どれもピンとこないw しかし、その風景をしみじみ想像すると楽しさはわかる。

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