2023年5月18日木曜日

岡嶋二人「クラインの壺」(1989)

岡嶋二人「クラインの壺」(1989)を新潮文庫(平成5年)で読む。平成初期のVR仮想現実空間サスペンス。

主人公上杉彰彦は大学生。趣味で書いたゲームブックを公募に出す。規定の4倍も長いため落選するのだがイプシロン・プロジェクトというゲーム会社(?)から5年間で200万円で権利を譲る契約。就職先も決まっていなかったので渡りに船。
これが時代の先端を行く画期的に新しいゲーム。実際に体験したように映像を見て肌に刺激。現実と区別がつかないほど。

しかし、連絡がこない。ようやく連絡が取れた。だが、溝の口の事務所から目隠しされたバンで30分かけて研究所へ移送され、そこでゲームの最終確認的にモニターとしてプレイさせられる。
自分で書いたアドベンチャーなので展開は知ってる。アフリカの小国に失踪した博士を救出に行くスパイアクション。

だが、ゲームにはまだ未完成の部分がある。バグのような?途中で画面が消え暗闇を落下するような不快な衝撃。そして「戻れ」という男の声が聴こえる…。

義理の兄が事故に遭ったと連絡。試験を中断し病院に駆けつけるも、そんな人は救急搬送されていない。もしかして、ライバル社がさぐりを入れるためにおびき出された?

美人でカワイイ高石梨紗という女の子もバイトで参加。だが梨紗が急にバイトを辞めると連絡?あれだけ一緒に仲良く話をしてたけど、そんなそぶりはまったくなかった。

梨紗の親友だという真壁七美という美少女が登場。梨紗と同じ学校でデザインを学んでる。家出少女同然で梨紗の部屋にいる。メモ帳に電話番号があったということで上杉に連絡してきた。梨紗と連絡がまったく取れなくなったという。

上杉と七美の間でこれまでの状況を照らし合わせるのだが、事実関係がまったく合わない。
梨紗はいったいどこへ?イプシロン社の言うことがだんだん信用できなく感じ始める。上杉は疑惑を深めていく。
上杉と七美はふたりで調査を始める。イプシロン社の正体とは?アメリカの病院での死亡事故とは?「クラインの壺」とは?!

なにせ平成元年の作品なので、ケータイ電話のない時代。安否確認ですれ違いのもどかしさを感じる。
しかも、VR空間で体験した虚構と現実とのギャップによって、登場人物たちが混乱に巻き込まれて行く。そして、驚きのラスト。

これ、今ではこの展開に慣れてしまった読者もいるかもしれないが、自分は予想以上に面白かった。
ページをめくってる最中もわくわくハラハラできた。語り口が巧み。読者も主人公と同じように戸惑いを感じるはず。
話の内容をあまり上手く説明できない。じわじわ怖いし、ラストもふわっと怖い。
VR世界の胡蝶の夢とでも言うべき内容。島田荘司「異邦の騎士」と並ぶ80年代の名作。併せて読みたい。

とにかく、まだ読んでない人には「読め!」と言いたい。てか、これはぜひ映画で見たい。自分の中で映像ができている。
もしかすると、ロシア中国北朝鮮は政権与党がつくりだした虚構の脅威なのかも…、ってそんなことはないか。

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