2022年7月5日火曜日

マーシュランド(2014)

「マーシュランド La isla mínima」(2014 ワーナー )というスペイン・アンダルシアを舞台にした刑事サスペンススリラー映画があるので見ておく。脚本監督はアルベルト・ロドリゲス
2015年に日本でも公開された。クロックワークスが配給。邦題からは何もイメージがわかない。たぶん沼沢湿地帯を意味してる。

1980年のスペイン・アンダルシア州セビリア県の町が舞台。湿地のあるラス・マリスマス(グアダルキビール湿地)近くの町(お祭り中)に刑事ペドロ(ラウール・アレバロ)が相棒中年刑事ファン(ハビエル・グティエレス)とふたりでやってくる。途中で車が故障して農業用車両に乗せてもらう。ホテルに深夜に着く。テレビでは労働者のデモ隊映像。
アンダルシアに湿地があるのかよ!という驚き。オープニングの空撮映像が神秘。

町の祭礼中に2人の少女が失踪した事件を捜査する。エストレヤは17歳。カルメンは16歳。
遅く着いたので食事しながら地元警察(憲兵?)から話を聴く。まだ人々は民主主義に慣れていない時代。憲兵には逆らうな。

スペインの祭りにも射的ゲームがあるのか。景品が酒瓶。
あと、ヨーロッパの刑事は聞き込みをするとき相手になにか奢る。マドリードから左遷された主人公刑事よりも、ベテラン刑事のほうがしっかり仕事してる。酒場で聴き込み?

被害者少女たちの家庭環境を調べる。田舎町を出ようとする少女の家庭は暗い。被害者の両親は警察の適当な捜査に不信感。どこの国も警察官は嫌われる。

聞き込み捜査に向かう移動手段が沼沢地なので小舟。死者と話ができる霊能力者のところへ連れていかれる。風景がスペインというよりもアマゾン。魚をさばきながら少女の居場所を教えられる。遺留品か何かを発見するもゴミしか出てこない。夜道を歩く謎の女性。密猟者。
そして突然、小川から相次いで下着姿の少女の死体。強姦された形跡。

猟銃持った男が深夜ホテルに「話がある」と押しかけてくる。銃のある社会はあぶない。話を聴くとこの街では過去に同じような少女惨殺事件が起こっていた。やっぱり祭の期間中。

ベテラン刑事は血尿で苦しんでるのに熱心に捜査。少女と接点のあったハンサム若者に話を聴くのに反抗的だと殴る。娘の父が借金してる理由を吐かせるために殴る。ペドロが見てないところで反抗的な老婦人にも乱暴。令状なしに電話盗聴。(この時代の刑事はこんなちいさなオープンリールテープレコーダーを持っていた?)
軍事独裁政権下で刑事とか、きっとよくないことをいっぱいやってきたに違いない。それがこの刑事の個性。

この刑事、単独行動をするのでどこかで殺されるんじゃないか?と思ってたらやっぱり襲撃される。尾行内偵に集中してすぐ近くに敵が来てるのに気が付かないとか鈍感すぎ。(これは組織からの脅し?と思って見てたら違うのかよ!)
ペドロも単独で新聞記者と接触し写真ネガの件を追う。
連続殺人なのに捜査員が刑事ふたりだけ?捜査本部とかないのか?見てて危ない。

軍事独裁政権から民主主義へ、混迷する過渡期スペインの闇。背後に見え隠れする麻薬密売組織が警察よりも強い?そこまで腐敗した社会?

そしてペドロとフアンは湿地帯の叢の中で犯人と対決。この時代のスペイン警察には応援を呼ぶ無線すらもないのか。
刑事が犯人をあんなに執拗にナイフでぶっ刺して現場で殺害していいのか?こういうキレやすい単独行動刑事そのものが闇。その正体をもやもやっとしたまま幕。

深夜の湿地帯でカーチェイス。日本人が今まで知らなかったアンダルシア。じめじめ湿度。この沼沢地という舞台がこの映画に趣を与えている。自分は渡良瀬遊水地や大潟村干拓地のことを想った。

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