2022年6月1日水曜日

Tora! Tora! Tora!(1970)

「トラ・トラ・トラ!」(Tora! Tora! Tora! 1970 20世紀フォックス)を初めて見る。昨年12月にBSプレミアムで放送。録画しておいたもので見る。
1941年12月8日の真珠湾攻撃を描いた大作。日米合作で破格の制作費用がかかってる。日米でほぼ同時期に公開。20世紀フォックスにとって「史上最大の作戦」と並ぶ規模。

監督はリチャード・フライシャー。日本側から制作に加わる黒澤明監督の件で紆余曲折。なにせ真珠湾を日米双方から描くことの困難さ。衝突と妥協。黒澤の降板やらキャストも変更が相次ぐやらで大混乱。たぶんこのへんのことは詳しく書くと分厚い本になる。
結果、舛田利雄と深作欣二が参加。なので80年代のハリウッドに見られるヘンテコ日本人は登場しないと予想。

ずらりと並んだ海軍将校たちに敬礼する連合艦隊司令長官山本五十六(山村聡)の開始シーンから圧巻。緊張感。さすがだ。
だが、直後に流れる琴の音色BGMがやはりアメリカ人がイメージする日本で珍妙。
佐官クラスの将校が起立整列してるときに説明セリフっぽい無駄口たたいてるのは違和感。そういうのは酒の席でやれ。

そんなシーンのあとに吉田善吾から連合艦隊司令官を山本は引き継ぐ。山本は本土にいたら殺されかねない存在。そのへんをセリフで説明。ドイツと同盟を結ぶことは危ない橋を渡ること。だが、日本がアメリカと戦争を開始するとドイツはアメリカにも宣戦布告。

アメリカは開戦前後の日本の状況なんて何も知らないんだと思ってた。ハル国務長官、スチムソン長官と野村大使のやりとりとかアメリカの視聴者は理解できたのか?日本側シーンが座って会話してるシーンが多くて退屈しなかったか?

ハズバンド・キンメル太平洋艦隊司令長官はマーティン・バルサム。ヘンリー・スチムソン陸軍長官はジョゼフ・コットン。日本側の暗号は解読されている。
この映画公開時に存命だった源田實第一航空艦隊参謀は三橋達也。淵田美津雄海軍中佐は田村高廣。なんだかみんな訛ってる。笑いの絶えない現場。

陸軍情報部、海軍の面々の会話を聴いていると、アメリカ側も日本の連合艦隊の行動を十分警戒していた様子。索敵機が不足してるぶんを最新技術のレーダーでカバーしようとしていた。
だが、日系移民を日本の手先と考えたことから、空軍基地の航空戦力を端から話して一か所にまとめて置いてしまうというミス。

アメリカ側から見た真珠湾攻撃映画というと「パール・ハーバー」(2001)という映画があるのだが、あれを評価する人はいない。この「トラトラトラ」は米軍の準備万端警戒ぶりをしっかり描いてる。ハワイの民間人とかカワイ子ちゃんとか一切出てこない。硬派。

海軍情報部少佐が危機感を持って方々を回るのだが、刻々とその時が迫っているのに週末のダンスパーティー。もう夜遅いからと情報が伝達共有されない。日曜は軍も休みなの?休暇はみんなずらして取るべきだろ。

日本海軍の偉い人たちの会話が日本人ならどこかで聴いたり読んだりしたことのあるものばかりで歴史絵巻名場面。南雲忠一第一航空艦隊司令長官は東野英治郎。出演俳優がみんなおじさんお爺さん俳優。

映画開始から85分。夜明け前、やっと空母からゼロ戦が飛び立つ。

米軍の偉い人が現場から切迫した報告が来てるというのにみんな呑気。「警報を出さないの?」「確認してからだ!」みんな何か異常を感じてるのに上に伝わらない。もう日本のゼロ戦がそこを飛んでる!みんな目の前で起こっている事態を信じようとしない。みんな天然。ドタバタぶりがスピルバーグ映画を見ているよう。
なにもかもがホラー映画の死亡フラグ。アメリカ人にとっては責任追及と戒めのための映画ということか。
その一方で日本側の周到な準備と目標達成ぶりが圧倒的。

この映画を見てる人といない人とでは真珠湾攻撃のイメージがかなり違うに違いない。基地って先制攻撃を受けるとこんなにももろいものなの?艦船も航空機も敵攻撃から退避させる場所がまったくない。戦闘機は飛んでる状態で敵を待ち受けないと何の役にもたたない。いくらなんでも情報伝達速度が遅すぎる。
戦艦アリゾナはもっと早々に総員退避させるべきだった。
この場合、消火活動とか無意味。状況を自分で考えてとっとと逃げろ!

日本側にもグダグダがある。アメリカへの通告がちゃんと間違いなく期限内に届いているのか?山本長官も天皇陛下も気にしていた。特に間違いのないように念を押したのにこのざま。
通信部にいるタイピストや局長たちがそろいもそろって呑気すぎ。キビキビ動け。アメリカの偉い人たちも来訪者を待たせるな。

南雲長官も攻撃を続けず艦隊を引き返した。空母がいないならこれ以上留まって攻撃を続けてもしかたがないと判断。だが、もうちょっと留まってエンタープライズとレキシントンを叩いていれば…。双方に運不運。

この半年後にはミッドウェーで日本側が地獄を見る。数倍にして返された。
つぎは世界がロシアに倍返しの番だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿