2022年5月27日金曜日

怪盗ルパン「黄金三角」(1918)

小学生のころ、図書室の江戸川乱歩「少年探偵団シリーズ」はだいたい読んだ。だが、同じポプラ社からシリーズで出ていたホームズとルパンにはまったく手を出さなかった。子どもには19世紀末のイギリスやフランスをイメージすることはほぼ無理だった。

数年前から読み始めたコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズはほぼ全作読み終わった。そしてついに、フランスのモーリス・ルブラン(Maurice Leblanc 1864-1941)を読み始めた。

ポプラ社「怪盗ルパン」全集(1958)のポプラ社文庫版(1988)で読むことになった。カバー画と挿絵は若菜等。
SNSなどでチェックしてみてもこの版で読んでるという人は見当たらなかった。
この版で読んだ理由、それは、図書館リサイクル本を無償で手に入れたから。そこに置かれていた3冊すべて持ち帰った。

子どものころに「怪盗ルパン」シリーズに夢中になったという人はたいていこのポプラ社の児童向け本で読んでいる。
訳者は南洋一郎(1893-1980)。なんと明治26年生まれ。現代の子ども向けに一部改変されていたとしても、登場するフランス紳士たちが自分の事を「わがはい」と呼ぶなどやや珍妙。

では、手に入れた3冊の内、まず「黄金三角 Le Triangle d'or」から読む。

第一次大戦中の1915年、義足で頭に包帯を巻かれた傷病兵青年士官パトリス・ベルバルくんはカフェで不審な外国人の会話を聞いてしまう。その場所で傷病兵仲間たちと身を潜めて待ち伏せしてると看護婦コラリー嬢が男たちに拉致誘拐されそうになってる現場に出会う。

だがコラリーは様子がおかしい。夫はフランス財界の大物で銀行家エサレ・ベイ氏。ずいぶん年の離れた夫婦。実はエサレ・ベイはトルコ人でその背後に敵国ドイツが?こいつは祖国フランスにとって裏切り者のスパイ?!

パトリスは忠実な部下ヤボン(片腕が無い巨人の黒人傷病兵)を従えて、フランスとドイツにまたがる国際的陰謀へと立ち向かう。
フランスの資産である3億フランの金貨がドイツに運び込まれることを阻止し、悪党に殺された両親の謎を追う。
だが、コラリーとパトリスは屋敷のなかの密室に閉じ込められ、やがてガスが充満という大ピンチ。

そこにふらっとスペイン貴族だというドン・ルイス・プレンナという謎紳士が登場し二人を助ける。この人がとても頭が良い。犯人は狂った老執事シメオン?!
自分、怪盗ルパンを初めて読むのだが、おそらくこのプレンナという紳士がルパンなんだろうと簡単に想像した。

で、アイツの正体は?ルパンはいつどこで登場?金貨の隠し場所は?という、この時代によくあるようなスパイスリラー展開へ。
ルパンはドイツ人スパイと知恵比べ。事件をまるっと解決し、爽やかに去っていく。
終盤、子どもが読むにしては次々と人が殺される。人の命が軽い。忠実な部下ヤボンが死んだのに、パトリスがその死をまったく悼んでいないのは違和感だった。

てっきり怪盗ルパンシリーズをピカレスクロマンだと予想していたのだが、ルパンは盗賊というよりも、偉大な祖国フランスのために活躍する快男児ヒーロー。大衆娯楽講談。毎回この程度のクオリティなら、それは人気者になるはずだ。

手に入れた本があと2冊ある。面白ければ今後もポプラ社版で読み進めたい。だが、ひらがなが多い児童向け書籍は大人が読むにはむしろ読みづらい。わりと読むのに時間がかかった。

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