2021年6月24日木曜日

松本清張「日本の黒い霧」(1960)

松本清張「日本の黒い霧」上下巻を文春文庫で読む。1960年に文芸春秋に連載され1974年に初文庫化された松本清張の代表作。2004年新装版で読む。

自分がこの文庫本を読むのはおそらく4回目ぐらい。章によってはたぶんもっと読んでる。初めて「下山国鉄総裁謀殺論」読んだときは五反野の現場にまで行ってしまった。ある意味、20代の自分にもっとも影響を与えた一冊であったことは間違いない。今回、人生で最後のつもりで読み返す。

下山国鉄総裁謀殺論
下山事件関連書籍はとても多い。謎が謎を呼ぶ未解決事件。背後にどす黒い渦が巻いている。ニセ総裁を用意して目撃させるとか手口が汚い。都合のいい捜査報告書をでっちあげる警察も酷い。怖い。
けど、国鉄の人員整理でGHQのリストと違うリストを用意しただけでここまで残酷な殺害方法をとるのかな?あれはたぶん裏切り者を殺すやりかた。満洲や右翼たちとの関係にはこの本ではまったく触れられない。

2021年の現在でも全体像のまるで見えてこない事件は世界中で起こってる。しっくりくる納得のできる説明がされる事件やスキャンダルのほうが少ない。安易に陰謀論に走ってはいけないことは、マトモな現代人なら多くの人が肝に銘じてる。
しかし、米軍というブラックボックスのあった時代なら、清張先生の推理と主張もそうかもしれないと思わされる。

「もく星」号遭難事件
これは今回読まなくてもいいかと思ったけど読み通した。昭和27年4月9日早朝、「もく星号」が三原山に衝突し乗客33名と乗組員全員が死亡した事故。
入間にあるジョンソン基地管制による高度指示のミス?米軍側の隠ぺい工作?

二大疑獄事件
昭電疑獄と造船疑獄。国民の血税で自己の欲を満たす政治家たち。犬養法相が指揮権発動し佐藤栄作幹事長を収賄での逮捕にストップをかけたことは日本の歴史上でもっとも酷い事例。汚い金はどこまでも汚い役回りを果たす。背後にはやっぱりアメリカの事情。これも歴史教科書でしっかり教えてほしい。

白鳥事件
札幌で刑事が狙撃され死亡した事件。この刑事が共産党員の検挙と逮捕に血道をあげる刑事だった。

ラストヴォロフ事件
狸穴のソ連代表部から二等書記官が失踪した事件。東京は昔から米ソの熾烈なスパイ戦の舞台。清張先生による実情の推測。

革命を売る男・伊藤律
これは正直とっくの昔に読む価値を失っている。少ない資料から清張先生が読み解いた推理が今日では正しくなかったことが判明してるから。だが今回読み返した。

以下、下巻へ。

征服者とダイヤモンド
終戦直後のドサクサで隠退蔵物資を自分のモノにして成り上がったやつらとか許せない。胸糞悪い。

帝銀事件の謎
これは小説帝銀事件を読んでいればとくに読み返す必要も感じない。だが、自分はこれを初めて読んだとき椎名町や聖母病院まで自転車で行って現場を見てきたw

鹿地亘事件
独立後なのにアメリカ諜報機関が日本人を拉致していたという酷い事件。自分がこの事件を知ったのもこの本が最初。これを読んだせいで、キャノン機関のあった池之端の岩崎邸も見に行ってしまったというw

推理・松川事件
松川事件に関する本はたくさんあるのだが、自分が初めてこの事件について読んだのもこの本。恐ろしいことを企画立案しそれを実行する冷酷非道なやつらがその後ものうのうと生きている。

追放とレッド・パージ
戦争の勝者として意気揚々と乗り込んできた米軍だったのだが、公職追放においても無能をさらす。「占領軍の追放指定の無知は、無力な小物を罰し、狡知にたけた大物を跳梁させる結果になったのであった。」
GHQ内部の事情と極東情勢の変化によって追放されるべき対象が変化。50年夏に始まるアカの追放は多くの悲劇を生んだ。これもしっかり教科書で教えるべき歴史の教訓。

謀略朝鮮戦争
さらにグダグダ無能をさらしたアメリカ。仁川上陸作戦の助言者は服部卓四郎?!

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