2021年1月22日金曜日

土屋太鳳「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017)

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017 松竹)という映画があるので見る。ぜんぜん自分が見たいと思うようなタイプの映画ではない。おそらく難病という障害を乗り越えて結婚するラブストーリー。主演が土屋太鳳なのでチェックしておきたい。

実話に基づく映画らしい。脚本は岡田恵和。監督は瀬々敬久。この人はキャリアのほとんどがピンク映画だ。
映画タイトルに「奇跡の実話」とあるのがちょっと嫌。こういうの、見たあとに実話だったと知って驚くほうがいいのに。「誰も見たことがない愛の形に涙する。」とまで書いてある。映画を売り込む側も必死。

いきなり超難病と戦う土屋太鳳。そして撮影する佐藤健のシーンが流れた後に回想シーン。みんなバカそうな合コン。調子のいいことを言う輩たちの中で、真面目そうなのが佐藤と土屋。

だが土屋は激怒していた。合コンに来ておいて、こういう所に来るような軽い女に興味ないみたいな態度なんなの?(怒)土屋は追いかけてきて佐藤に絡む。せっかく来てるなら楽しそうにしろ!楽しくなくても楽しそうにするのが大人でしょ!

だが、男はただお腹が痛いだけだったと弁明。あれだけ気の強かった女が男の言い分を即信じてしまうのはちょっと違和感。ここまで気の強い積極的女にロックオンされる消極的男。ある意味しあわせな男女の出会い。映画冒頭のシーンとしてのつかみは良い。土屋太鳳は面白い。あっという間に交際が進展。季節は巡る。

大学生か?と思いきや、佐藤は自動車整備工として働く青年。土屋はレストランで働いてる。
いつの間にか土屋の両親ともご挨拶。両親は杉本哲太と薬師丸ひろ子。このふたりを見ると今でも「あまちゃん」を思い出す。
で、あっというまにプロポーズ。ここまで20分もかかってない。プロポーズされた直後の土屋の反応がすごくいい。すごく面白い。まさに理想のカップルの理想の展開。土屋「幸せ過ぎて、なんか怖い。」

やがて女は頭痛を訴える。そして物忘れ。デートに行った記憶をなくす。幸せな男女の運命が暗転。土屋の主観幻想が恐ろしい。土屋はヒステリックに取り乱す。ほとんど狂乱状態。ビクンビクンと激しく痙攣。

意識を失って昏睡。なんだこれは?なんだこの病気は?卵巣に腫瘍ができてその抗体が間違って脳に入ってしまった難病。初めて耳にする病気だ。
あれだけ可愛かった彼女が口半開きでチューブとパイプでハムみたいになって寝たきり。なのに手だけは激しく動いてる。

男はバイクで2時間かけて病院まで見舞いに通う。それは想像を絶するつらさだ。社長の北村一輝がいい人でよかった。男はケータイで動画を取り始める。

卵巣を摘出する手術という段階になったら、土屋の両親もさすがに婚約者佐藤がけなげに病院に通ってるのを見るのがつらくなる。もう迷惑かけられない。

目が覚めた後はゼロから必死のリハビリ。だが、意識を取り戻した後に佐藤のことだけが思い出せなくて戸惑うのには、何でだよ!?と、見てるこちらも戸惑った。それ、男にとってさらなる残酷な仕打ち。男は自分が婚約者であることを出会った時から説明。女は説明メモを参考に必死で思い出そうとする。それ、悲しい。

この映画、予想通りと予想外の配合が絶妙だった。「8年越しの花嫁 奇跡の実話」というタイトルに偽りなし。
この物語を世間に伝えようとしたことは志が高いし、映画エンタテインメントとしても精度が高い。
障害を乗り越え恋を成就させるタイプのラブストーリーに感動できるという人にはおすすめできる。

実話に基づいてるからなのかストーリー展開にリアルを感じる。
それと、役者たちがみんな名優。泣かせにかかるようなシーンでなくてもついうっかり泣かせられそうになる。ウェディングプランナー中村ゆりですらも良い演技をしてるように感じた。

そして土屋太鳳の演技が衝撃的。顔面マヒした役は美人女優が受けるような役でない。素晴らしくて感心しかなかった。土屋はこの演技で第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞だったのも納得。日本映画で重要な女優になりつつある。

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