2020年9月20日日曜日

杉原千畝(2015)

「杉原千畝 スギハラチウネ」(2015 日本テレビ、東宝)をやっと見た。
リトアニア総領事時代に多くのユダヤ人にビザを発給したことで有名な外交官杉原千畝の伝記映画。多くのシーンをポーランドで撮影したそれなりにお金のかかった大作。
チェリン・グラック監督によれば、唐沢寿明の主演ありきで持ち込まれた企画だったらしい。

映画はユダヤ人が東京外務省へ杉原を訪ねる場面から始まる。だが、対応した課長(滝藤賢一)から「そんな外交官いないけど?」「ソーリー。お役に立てなくて~」と軽い不誠実な対応。
公式な問い合わせじゃなかった?だからナメられてる?なんで現在の所在を調査すらしない?イスラエルはモサドを使ってこいつを殺していい。

杉原は戦後しばらくまで日本人には無名だったのだが、昭和のころから多くの日本人に知られている。自分も歴史番組の再現映像なんかで見て知っていた。だがそれはユダヤ人の恩人としての杉原のみ。満州や哈爾濱でのスパイ活動工作員としての非情な現場も描いてる。

対ロシア諜報活動で関東軍のイキった将校(塚本高史)の暴虐非道に嫌気がさして満洲を去る。そしてソ連に派遣されることになるもソ連は入国を拒否。で、夫人(小雪)と子どもを連れてリトアニア・カウナスの総領事に赴任。
杉原は経歴上ロシア語が堪能と聴いていた。それどころか各国語が話せたらしい。この映画はポーランド人、ロシア人たちとの会話シーンのほとんどが英語。

総領事はドイツ系の事務員を採用。ここ、緊張が走る。スパイじゃないのか?
お供の者もなく総領事ひとりふらっと街の酒場へ。ポーランド人ペシュが接触してくる。外交官の周辺にはスパイたちが集まってくるのにこいつも運転手に採用。ポーランド人にっとってもソ連は共通の敵。

東欧は独ソ不可侵条約によって独ソに分割されることに杉原は気づく。大島ドイツ大使(小日向文世)は目がイッちゃってる。(こいつが日本を誤らせた)
ドイツがポーランドのユダヤ人を殺してることを知る。ドイツ兵は若者に至るまですべて狂ってる。

カウナスはアメリカ公館すらもソ連に接収される。なぜかソ連兵が酒焼けしたような老人。ソ連兵がすごくだらしない軍服。
ユダヤ難民たちは各国総領事たちからも冷たくされる。そして日本総領事館も閉鎖が迫る。ユダヤ人が門前に集まりだす。
ユダヤ人は日本に入国し通過するヴィザがほしい。だが、最終目的地に関してオランダ総領事が書いたキュラソーに渡る許可証なるものが体裁をなしてない。ここ、初めて知った。

で、小雪夫人のつぶやきひとつで杉原は考えを変える。ヴィザを書き始める。ここ、ユダヤ人たち歓喜。書式の怪しいパスポートですらもヴィザを書く。領事館閉鎖後もホテルでもリトアニアを去る駅でもヴィザを書く。ドイツ系リトアニア人グジェにヴィザスタンプも託す。

杉原はベルリンで大島大使からケーニヒスベルクへ行くよう命令される。独ソ戦が近いことを知る杉原はゲシュタポに追われる。カーチェイスと銃撃戦。杉原の情報を無視する大島無能。このへんは映画として盛ってる?
そして杉原はルーマニアで終戦。かつて諜報活動で共に戦ったイリーナからの手紙に涙する。
そして杉原はカウナスでヴィザを書いたニシェリとモスクワの広場を歩いていて再会。杉原がヴィザを書いて救った人物のひとりが原爆開発に携わったことも知る。

語学と外交交渉が生きる道の外交官が戦争を避ける傾向があるのはあたりまえかもしれないが、正しいと信じたことをする姿は普通に感動的。
スギハラ伝説は左翼の創り出した美談だという人がいる。杉原だけがヒーロー扱いが面白くない人たちがいたのかもしれない。

だが、ユダヤ人たちがドイツとソ連を悪魔だと考える一方で、日本のイメージがいいものになっているのは杉原のおかげ。日本のかけがえのない財産。いつか何かの役にたつかもしれない。使えるものはなんでも使え。

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