2020年10月27日火曜日

姑獲鳥の夏(2005)

京極夏彦の原作小説を実相寺昭雄監督が実写映像化した「姑獲鳥の夏」(2005 日本ヘラルド)を15年ぶりぐらいで見返した。DVDが出たとき以来見返した。
1回見てそれっきりだったけど、雰囲気はわりと好きな映画だった…という記憶。

自分は京極夏彦を一冊たりともまだ読んだことがない。京極堂こと中禅寺秋彦(堤真一)が名探偵なのか霊能者なのか?見当がつかない。いう事が周囲の人を煙に巻く。この人、何なん? 
人気シリーズになってくれたらよかったのに次作「魍魎の匣」で打ち止め。

オープニングから池辺晋一郎の音楽(オンド・マルトノ?)と実相寺監督のキテレツ映像の雰囲気がとても良い。脚本は猪爪慎一。撮影は中堀正夫。
関口巽(永瀬正敏)が傷痍軍人水木しげる(京極夏彦本人)とぶつかる坂シーンから水木しげるの描く墓場みたいな雰囲気。

「京極堂、20ヵ月ものあいだ赤ん坊を身ごもっているなんて不思議な事があるんだろうか?」という昭和27年の夏。京極堂「この世には不思議な事などなにもないのだよ。関口君。」この関口君が人の話を聴いていないぼんやり男。
四国のとある大名お抱えの医家の家系の、雑司ヶ谷にある産婦人科医の娘の不気味な噂。夫は失踪し妊娠20か月を迎えても出産の兆しがない。この怪談を関口に語って聴かせるのが京極堂の妹敦子(田中麗奈)。かわいい。

関口と京極堂の共通の友人榎木津(阿部寛)は他人の記憶が見える超能力者探偵?この事務所を着物姿の婦人久遠寺涼子(原田知世)が訪ねてくる。不在の榎木津に代わって関口が話を聴く。妹の久遠寺梗子の夫牧朗がなぜ失踪したのか?生きているのか?調査依頼。
そこにちょうど戻ってきた榎木津は開口一番「あなたは嘘をついている」
この映画は公開から15年たった今も最低評価に近い酷評。だがそれは京極夏彦のファン、もしくはミステリーだと期待してこの映画を見た人たちだろうと思う。期待したものが出てこないと人は失望する。

そもそも原作が世界観重視の長ったらしい怪奇幻想ホラー。事件として大して驚くような展開もない。謎解きもない。それは主人公も認めてる。
まじないハッタリ怪奇なのに合理的解釈。結果、ほとんどの視聴者がどう見たらいいのかわからないと戸惑ってる。

キャストが豪華だけど誰一人ハマっていないと思われてる。宮迫が一番よかった気がする。田中麗奈は現代娘。そもそも昭和20年代が似合う女優なんてもうどこにもいない。

自分のように実相寺監督による何かヘンテコなものを期待した人には面白いところもあっただろうと思う。昭和を舞台にした作品は昭和を知ってる人にまかせろ。エンディングのスタッフロールの感じも好き。
自分、数年前に友人と東北を旅した。ふらっと山県市霞城公園内にある明治11年設立の擬洋風建築「旧済生館本館」を見たとき、「どこかで見たことがある」と思った。この映画のせいだった。おそらくこの映画の久遠寺産科医院のモデルは山形済生館病院?

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