2020年10月24日土曜日

コーネル・ウールリッチ「喪服のランデヴー」(1948)

コーネル・ウールリッチ「喪服のランデヴー」の高橋豊訳1976年ハヤカワ・ミステリ文庫版(2002年第8刷)を読む。一昨年秋に100円で見つけて確保しておいたものを今になってやっと読む。
RENDEZVOUS IN BLACK by Cornell Woolrich 1948
婚約者を不慮の事故で亡くした男が逆恨み。無関係な人も巻き込んで次々と復讐していく最悪に酷い話。

ウールリッチの文体はリズムがあって読みやすい。そして誰も真似できないほどに詩的で美しい流れるような文体が読んでいて心地よい。どんどん読み進められる。2晩で読み終わった。

だが、肝心な箇所はあまり説明しない。読者はなんとなく状況を描写と会話から推測していくしかない。ハリウッドのサスペンス映画っぽい。

まず、ジョニーの恋人ドロシーの死亡状況からしてあまり説明がない。このポイントが文庫本裏のあらすじ解説ですでにネタバレ。
いくら第二次大戦中でもアメリカの市街地でそんなことって起こる?だとしたら旅客機というものは日常そこにある恐怖。

で、男は複数の航空会社に入り込んで必要なファイルを収集してふっといなくなる。おそらくこの男はジョニー。貧乏ぼんやり男にそんなことが可能か?少しばかりの父の遺産がすぐになくなってしまわないか?
それにアメリカ人って日本以上に同姓同名が多いような気がする。

「最初のランデヴー」では議員の妻がドアの釘で脚をひっかいて破傷風で死んでしまう。だが、故意にやるのは無理がないか?
「第二のランデヴー」では無実の男を殺人事件(愛人を絞殺)の容疑者にしたてあげ死刑にしている。これも仕組まれた罠だとしても実際にそうなるかは難しい。

「第三のランデヴー」では、軍に入隊した男の妻の不貞をでっちあげ告発する匿名の手紙。結果、妻もろとも心中事件へと影で導く。こいつは脱走兵になり車強盗までしてるような男なので人格的に問題ありだが、妻はなんの落ち度もない。

ここまできてカメロンという愚鈍そうな刑事が、3つの事件に共通する書置きメモに不審なものを感じて調査する。(上司が止めるのに)
通常の映画やドラマならこの刑事が主人公になるはずだが、ウールリッチはそれぞれの章で不幸になっていく男と女のドラマを淡々と描く。ジョニーはチラっと見切れるようにしか登場しない。

第四のランデヴーではカメロン警部は次のターゲットになると予想される恋する少女を守ろうとするのだが、最悪のバッドエンド。
第五のランデヴーも最愛の人を助けようと逃亡に次ぐ逃亡の末に最悪の終末。カメロン無能。警察署の課長もカメロンを無視するようになるのが酷いw

ロマンと詩情の美しくも哀しい悲劇。内容的にはサスペンス連続ドラマ。推理小説ではない。だがそれでもやっぱりこの作品は読んでいて面白かった。

2 件のコメント:

  1. 金曜日に大阪で、繁華街で飛び降り自殺した高校生に巻き込まれた19歳の女性が死亡したことをNEWSで知りました。
    相手は死んでいるのだから直接罪も問えない。おまけに未成年。遺族の悲しみや、怒りはいかばかりか。
    ジョニーが21世紀に生きていたら、相手の親か兄弟か、それとも自殺に追い込んだ(やつがいたのなら)同級生たちに復讐するのでしょうか。

    ウイリアム・アイリッシュ(=コーネル・ウールリッチ)の本はみんないいけれど、特に「暁の死線」と「黒い天使」と「喪服のランデヴー」が好きです。
    いつも女の子が可愛くて、男の子はナイーブでどっちも底辺の生活者。貧しく力なく、運命に純愛を引き裂かれ、もがき続ける物語ばかりです。
    「喪服のランデヴー」は最後の章が好きで切なくて何度も読んだ記憶があります。

    メインはハヤカワだけど、創元も以前、アイリッシュの短篇集を6冊出していて、どれも名作ぞろいなので、もしBOOKOFFあたりで見つけたらぜひご覧になってください。そしてまた取り上げてくださいね。

    返信削除
  2. もうこの世界は酷いニュースばかり。嫌なニュースはチャンネルを変えるしチラ見で消す。そうやって自分を守るw
    アイリッシュとウールリッチの長編作は今後も読んでいきたい。できればすべて集めたい。

    返信削除