2020年7月26日日曜日

エラリー・クイーン「幽霊屋敷と消えたオウム」(1944)

エラリー・クイーン「幽霊屋敷と消えたオウム 見習い探偵ジュナの冒険」という小学校中級以上向けの児童書が角川つばさ文庫から出てる。中村佐千江新訳で2016年に初版。
THE GREEN TURTLE MYSTERY by Ellery Queen, Jr. 1944
エラリー・クイーン国名シリーズや短篇集「冒険」にちょくちょく出てくるクイーンのアパートメントの少年執事ジュナが主人公のシリーズ?!そんなのあんの?
クイーン親子はまったく出てこないし触れられない。なのであのジュナとはジュナ違い?

巻末に解説とかないので不明なのだが、エラリー・クイーンにはジュニア向けのシリーズがあるらしい。
日本の少年少女に戦時中のアメリカの少年探偵ものを読んでもらおうという角川の素晴らしい企画。イマドキなイラスト入り。

ジュナ少年は靴磨きの客を探しに広場へ。そこで昼寝してる青年新聞記者ファーロングさんと出会う。そこへ時間だから社に戻るように言いにやって来た小間使いアルバイト少年ベンと出会う。
このベンくんがポケットにカメ(ウォーターベリーという名前がある)を入れている。このカメがなんと時間を教えてくれるカメ。

新聞社にやってきた不動産業のアーキンス氏は借り手のつかない幽霊屋敷があって困ってる。幽霊を追い出すお祓いのできる人を募集したい。
これは記事になるかもと思ったのだが、この屋敷の近所のベンは屋敷の中に誰かがいる雰囲気を感じ取る。
ジュナくんとベンくんは思い切って屋敷にアタック。すると少女が中から扉を開けたのだが、その奥から叱りつける男の声。慌ててドアが閉まる。
このときカメのウォーターベリーが屋敷の中へ取り残される。カメを取り返さないと。

ジュナが実家で買ってたスコッチテリアのチャンプはカメを見つけるのが得意。たまに街に買い出しに出てくる大工のブーツさんにチャンプを連れてきてもらおう。おばさんが犬が苦手だからベンの家で預かってもらおう。

チャンプは緑の羽根のついて帽子の怪しい男に吠える。アーキンス氏(こいつは何か隠してる)の車に轢かれそうになる。屋敷の中にスペイン語を話すオウムがいる。屋敷で会った少女をパン屋で発見。世間を揺るがす偽造紙幣事件。などなど、様々な不思議と遭遇。

この本の登場人物たちがほぼ全員ちゃんとしてる。屋敷に潜入するのに許可を得たり、チャンプを連れてきてもらうブーツさんにガソリン代を支払わなきゃと靴磨き16回分を前借したり、新聞社をクビになったファーロングさんのことを心配したり、子どもながらに気をつかう。感心しかない。庶民なのに紳士。

ジュナくんの勇気と知恵、そして秘密情報部員マクハチェット氏の協力で事件を解決。ジュナくんがまるっと伏線を回収し事件を説明。

これは面白かった。童心に帰って楽しくページをめくれた。乱歩の少年探偵団シリーズよりもクオリティが高く、親子で読みたい本だといっていい。なんでアニメ化されないの?

角川つばさ文庫さんに感謝だ。こんな面白くて心優しい気分になれる少年向け冒険ミステリーは他にない。この企画をどんどん進めてほしい。

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