2020年5月5日火曜日

ソポクレス「アンティゴネー」(BC.442年ごろ)

引き続きソポクレス「アンティゴネー」を読む。時系列的にアイスキュロス「テーバイ攻めの七将」を読みたいところだが、ソポクレスのテーバイ三作からやっつける。

岩波文庫には2種類の「アンティゴネー」がある。今回自分が読んだものは中務哲郎訳2014年新版。なぜかソポクレスからソポクレースと表記変更。表紙解説文のフォントも変ったようだ。

「アンティゴネー」が上演されたのは紀元前442年か441年。いずれにしろ紀元前5世紀の文学作品に触れられるのは奇跡。
欧州では「オイディプス王」と同じかそれ以上にその芸術性が評価され研究上演が盛ん。

オイディプス追放後、ふたりの息子が王座をめぐって対立。テーバイを追い出された兄ポリュネイケースはアルゴス軍を率いてエテオクレースの守るテーバイを攻める。
アルゴス軍は破れ撤退するがポリュネイケースとエテオクレースは相打ちで共に死す。呪われたラブダコス王家の男子はいなくなった。そこでメノイケウスの子クレオーンがテーバイ王に。

クレオーンはエテオクレースは丁重に埋葬。しかし、テーバイを攻め神殿に火をつけたポリュネイケースの亡骸は埋葬することはおろか哀哭も禁止。野鳥野犬の喰らうままに放置。番人を置いて取り締まり、犯したものは石で打たれ殺される。

この劇はアンティゴネーが妹イスメーネーに向かって「兄を埋葬させないとか酷くない?」と語る。慎重な妹は姉を諫める。
この会話がさすが新訳なので現代的でわかりやすい。普通に現代日本で姉妹がしてそうな自然な会話。

ポリュネイケースの亡骸の番人がクレオーンの元に駆け寄る。死体を砂で覆った者がいる!クレオーン激怒。犯人を見つけろ!

クレオーンの言葉
「国全体を導く身でありながら、最善の施策に手をつけず、何かを恐れて口を閉ざしたままでいるような男は、わしに言わせれば、今も昔も、最低の男なのだ。」
「また、親しい者を己れの祖国よりも大事と心得るような輩も、無に等しい奴だ。」
アンティゴネーがクレオーンのところへ連れてこられる。このふたりの口論が面白い。
そして、アンティゴネーの婚約者でクレオーンの息子ハイモーンと父クレオーンの口論も面白い。
さらに、預言者ティレシアースとクレオーンの口論も面白い。ティレシアース「片意地を張ることこそ不首尾の元凶」

クレオーンはティレシアースの予言にビビッて急いでアンティゴネーを助けにいくのだが、そこでアンティゴネーの縊死体を抱くハイモーンが斬りかかる。そしてハイモーンは自殺。
息子の自殺を聴いた妻エウリュディケーも自殺。クレオーンの嘆きと悲しみ。

結局、芝居としてはオイディプス王と同等かそれ以上。
この岩波文庫は後半3分の1が詳細な解説。本編中の疑問点にすべて答えてくれる。

0 件のコメント:

コメントを投稿