2020年5月20日水曜日

太宰治「グッド・バイ」(昭和23年)

太宰治「グッド・バイ」を新潮文庫版(平成19年第65刷)で読む。戦後の昭和20年から23年までに書かれた16本の短編からなる一冊。では順番に読んでいく。

「薄明」「苦悩の年鑑」「十五年間」「たずねびと」すべて戦後の昭和21年に書かれたもの。
太宰を知るために重要かと思われる。太宰も戦争中は妻子を連れて空襲を逃げ惑い疎開した。そして「思想」というものをバカにする。

大正時代に本州の北端の村の児童でもデモクラシーを知っていたのに、30年経ってまた「民主主義」とか、まったく進歩のない茶番。2.26事件に関係した人々も罵倒。東條もバカにしていた。
焼け出され故郷で死のうと幼い子を連れ青森へ向かう太宰夫妻。子に蒸しパンなど恵んでくれた20歳ぐらいの女の人を探す。「あのときの乞食は私です」

「男女同権」は女性たちに酷い目に遭わされ年老いた男の独白。この短編が読んでいて一番辛い。

「冬の花火」「春の枯葉」は戯曲。やはり敗戦後の精神的混乱と生きることの絶望、男女の痴情と、年老いた両親と、とにかく悲哀。読んでいてひたすら切ない。
「春の枯葉」は展開が唐突。メチルアルコールは怖い。

「メリイクリスマス」(昭和22年)故郷青森の実家から再び東京へ戻ることになった主人公。昔知り合いだった同じ年の婦人の娘(20歳ぐらい)と東京の本屋で再会。

「フォスフォレッセンス」「朝」「饗応夫人」「美男子と煙草」「眉山」「女類」「渡り鳥」、すべて戦後の精神的な放心状態、人々の再会、そして酔っ払い太宰。などなど。読み終わってそれほど印象に残らなかったものも多い。

グッド・バイ(昭和23年)
戦後ヤミ物資で金を貯めたので、戦争中疎開させていた妻子を呼び戻し、編集者一本でやっていく決意を固めた田島。女たちと別れるために美人キヌ子に有償で協力を要請。

関係を清算するために女Aの働く美容院へ。だが、それ以外は怪力で大食いで強欲で気の強いキヌ子とのののしり合いのみw
この男にはまったく感情移入できなくて読んでいて困惑。

0 件のコメント:

コメントを投稿