2020年4月6日月曜日

アガサ・クリスティー「黄色いアイリス」(1939)

アガサ・クリスティー「黄色いアイリス」を読む。中村妙子訳ハヤカワ文庫で読む。
私的クリスティマラソン65冊目は9編から成る短編集。
THE REGATTA MYSTERY AND OTHER STORIES by Agatha Christie 1939
オリジナルではレガッタ・ミステリーが本のタイトルになっていたのだが、この本では「黄色いアイリス」に変更。では順番に読んでいく。

レガッタ・デーの事件 The Regatta Mystery(1936)
上流階級の集うテーブルで起こったダイヤ紛失事件をパーカー・パイン氏がサクッと解決。クリスティ女史は最初から読者の目くらましのために許されるギリギリの嘘をついている。

バグダッドの大櫃の謎 The Mystery of the Bagdad Chest(1932)
スコットランドに向かったはずの紳士が箱の中から刺殺体となって見つかる。そのフラットの主人が夫人をめぐってスキャンダルなロマンスもあって逮捕。だが、ポアロも「完全」と褒める真犯人が!
「クリスマス・プディングの冒険」収録の「スペイン櫃の秘密」とほぼ同じプロット。
ポアロ&ヘイスティングズものだが、ヘイスティングズくんの存在感がまるでない。

あなたの庭はどんな庭? How Does Your Garden Grow ?(1935)
ポアロに届いた老婦人からの不安を綴っただけの要領を得ない手紙。やがて送り主の婦人を新聞の死亡欄で知る。屋敷を訪問したポアロは逮捕されたロシア娘の看護婦を救う。

ポリェンサ海岸の事件 Problem at Pollensa Bay(1936)
マジョルカ島へ着くとどこもホテルがいっぱいで困惑するもなんとか部屋を得たパイン氏。そこで息子が熱を上げる不良娘が気に入らないのでなんとかしてくれと母親から頼まれる。これはだいたい結末が予想できるパーカー・パイン人情喜劇。

黄色いアイリス Yellow Iris(1937)
とある婦人から深夜の電話。危機を察して急行するも黄色いアイリスが飾られたテーブルに電話した女性はいない。これは後に発表された長編「忘られぬ死」と同じ舞台設定だけどまるっきり同じというわけでもない。なので読むべき短編。

ミス・マープルの思い出話 Miss Marple Tells a Story(1939)
ホテルに宿泊中の夫妻の妻が部屋で刺殺された事件をマープル婆さんが語る。

仄暗い鏡の中に In a Glass Darkly(1934)
鏡に男が女を絞め殺す場面を見た男の話。これは幻想怪奇短編。

船上の怪事件 Problem at Sea(1936)
夫人が船室で殺された密室殺人。宝石売りによる現金盗難事件?乗り合わせたポアロが簡単に事件解決だが、こんな小学生みたいなトリックではどんなぼんやりした警察でも騙せない。

二度目のゴング The Second Gong(1932)
屋敷の主人が室で拳銃自殺してた事件。客人として滞在していたポアロが犯人を指摘する。
ゴングって何?屋敷内の人々に食事の時間を知らせるためのものらしい。この時代の小説を読んでいると銅鑼のようなものを叩く場面があったりする。
これは中編「死人の鏡」と似た要素の出てくるアッサリ短編。

以上のうち自分が好きだったのは「バグダッドの大櫃の謎」「ポリェンサ海岸の事件」のふたつのみ。

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