2019年8月2日金曜日

アガサ・クリスティー「リスタデール卿の謎」(1934)

ハヤカワ・ミステリ文庫クリスティー短篇集11「リスタデール卿の謎」を読む。訳はおなじみ田村隆一。
THE LISTERDALE MYSTERY by Agatha Christie 1934
クリスティーは長編が66冊、短編集が14冊(?)、あとは戯曲と恋愛小説、自伝、アンソロジー。
調べてみたら、これで自分にとってアガサ・クリスティー46冊目。
なので、自分はそろそろクリスティー全作読破の中間点あたりに達したようだ。
クリスティーの文庫本は早川、創元、新潮、その他とあるのだが、今後は把握するために、できることなら早川で統一したい。

12本の短編を収録した1冊。すべて30Pほど。では順に読んでいく

「リスタデール卿の謎」没落しカツカツの生活をしているヴィンセント夫人は新聞広告で見た豪華家具付きで形式程度の家賃だという邸宅を借りる。だが、持ち主のリスタデール卿は失踪中。ミステリ好きの息子によれば、きっと殺されてどこかに埋められているのでは?だが、これはミステリというより人情噺短編小説だった。

「ナイチンゲール荘」原題はPhilomel Cottageという。たぶん日本人にはギリシャ神話の素養がないためにこんな邦題をつけたんだろうと推測。これは旦那が「青髭」だと疑った夫人目線のクライムサスペンス?

「車中の娘」失業し傷心。あてもなく列車に乗り込んだ青年。するとコンパートメントに「匿って!」という美しい娘が駆け込んでくる。王女のロマンスゴシップなの?軽いラブコメ。いろいろ都合よすぎハッピーエンド。

「六ペンスのうた」老婦人が自宅で殺害された事件の容疑者にされた女性が、老弁護士に事件の解決を依頼する話。これは短編ミステリーと言っていい。事件のカギを「24羽の黒ツグミ」というレストランの名前から思いつく。

「エドワード・ロビンソンは男なのだ」これは原題をThe Manhood of Edward Robinsonという。邦題がやや珍妙。懸賞で当てた500ポンドで婚約者に内緒でスポーツカーを買うのに使った男。カン違いと人違いでネックレス盗難事件にかかわってしまう。青年があこがれるような冒険と美女との出会いショートドラマ。

「事故」名前を変え新たな生活している毒婦をマークする刑事の落ちた罠。

「ジェインの求職」新聞の求人広告をみて「自分にぴったり」と応募したヒロインが某国の王女の身代わりとして巻き込まれるちょっとした騒動。すごくラノベ感がする。

「日曜日にはくだものを」ドライブデート中に買ったさくらんぼのかごの中から宝石が出て来て…というちょっとした謎。まるで小学生向け読物。

「イーストウッド君の冒険」ネタに困った作家の元にかかってきた間違い電話は新手の劇場型詐欺だった。まるでコンフィデンスマンJPのような小噺。

「黄金の玉」これも若い男女のラブコメ騒動。気の強い貴族娘のプロポーズ大作戦。バナナの皮で転ぶ男なんてほんとうにいるの?

「ラジャのエメラルド」階級社会の英国では海水浴場の着替え小屋にも身分の差があって世知辛い。主人公の名前がなんとジェイムズ・ボンドw 宝石盗難事件に巻き込まれるコメディー。

「白鳥の歌」とある伯爵夫人の城で「トスカ」を歌うことになったソプラノ歌手。直前になってスカルピア役バリトンが毒を盛られて歌えなくなったため、急きょ代役をたてることになって…。

どれもものすごく軽い短編。3作を除いてそもそも殺人すらない。ミステリーですらない爽やか青春小説。
人に薦めたくなるような短編はひとつもないw これはアガサ・クリスティーをかなり読み進めてきた人がちょっと息抜きに読むべき1冊。

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