2019年7月27日土曜日

銀林みのる「鉄塔武蔵野線」(1994)

銀林みのる「鉄塔武蔵野線」(1994 新潮社)を読む。ずっと友人の本棚にあったものをやっと手に取る。

送電線鉄塔に魅せられた小学生が、自宅近くのナンバー75鉄塔からカウントダウン。鉄塔の基礎部分の中央にメダルを埋めながら、武蔵野線の果てを見る旅に出るロードムービー小説。1997年には映画化もされている。(自分はまだ未視聴)

小学生の夏休み、友人とふたりで自転車で行けるところまで行く。誰でも一度はこの道はどこまで?この線路はどこまで続いているんだろうか?という疑問を自分で解いてみたい衝動には覚えがあるはず。
児童文学のように思うかもしれないが大人向け。文体がわりと固い。「韜晦(とうかい)」という単語の意味がわからず調べたw

鉄塔とはマニアックだが、小学生目線なので、「タモリ倶楽部」のような技術的歴史的法律的うんちく知識が得られるわけではまったくない。

さすがに鉄塔と田舎の描写が続くだけでは読者の集中力が続かないと思ったのか、新潮社の編集者は活字の上部にモノクロの鉄塔写真を延々と載せている。これがあるおかげでイメージがしやすかった。

旅の途中で出会う大人たちが酷い。こどものこだわりと執着心と情熱に無理解無関心。え、90年代日本ってまだ室町時代だっけ?こどもの知的好奇心には優しくつきあってあげろ!読書中「しねよ!」とフィクションなのに何度もつぶやいた。

読んでる最中はまるで白昼夢。夏の暑さで汗だくな感じが伝わってくる。
だがやがて突然ばッと現実に引き戻される。少年の両親は捜索願を出していた。

この小説は第6回日本ファンタジーノベル大賞(読売新聞・三井不動産)を受賞しているらしいのだが、いったいどこがファンタジーノベル?と思っていたのだが、ラストがまるで宮沢賢治の童話のようになっていた。
変電所所長は「風立ちぬ」の野村萬斎の声で脳内再生w 「耳をすませば」のバロンだったかもしれない。

1994年といえばまだWindows95も存在しない。インターネットも存在しない。広末涼子がDoCoMoのポケベルも初めていない。そんな時代に突然出現した鉄塔文学がこの本。
銀林みのるという作家がその後どんな本を書いたのか?残念ながら自分は知らない。

0 件のコメント:

コメントを投稿