2019年6月28日金曜日

三島由紀夫「花ざかりの森・憂国」

三島由紀夫「花ざかりの森・憂国」を新潮文庫版で読む。そろそろ本気出さないと死ぬまでに全作読み終わらない。

あれ?新潮文庫の三島由紀夫は独特の美しいグレーとオレンジの明朝体表紙かと思っていたのだが、現在出版流通しているものはほとんど新表紙だ。

三島由紀夫こと本名・平岡公威くん(16歳)が戦時中に書いた処女小説「花ざかりの森」(文庫本だと49P)を読むためにこの本を手に取った。

これがもう数ページめくっただけで天才少年の書く文章だと感じた。なにしろ大人が注意深く読んでもぜんぜん頭に入ってこないw 
何を書きたいのかもわからないw 何も知らずに読んだなら、老人の書いた文章だと思うに違いない。困惑。

小説に夢中でありながら、学習院高等科を首席で卒業。東大法学部、大蔵省という天才くんの書くものなので一般人の理解を超える。
幸いなことに、新潮文庫版は巻末解説が三島由紀夫。本人によれば「リルケ風」「浪漫派の悪影響」。もうこの16歳のときの作品をぜんぜん気に入ってないらしい。

「憂国」(昭和36年)
二・二六事件から3日後に「皇軍万歳」と自決した青年将校とその妻。美男美女の官能自刃プレイ。三島の趣味嗜好。腹に軍刀が刺さっていく実況解説。そして夫人も自刃。日本語文章力には脱帽。怖くて痛くて読めたものでない。

収録された13編すべて読み通したけど、個人的に「良いな」と感じられたものは「海と夕焼」「詩を書く少年」、次点で「卵」と「新聞紙」。

「海と夕焼」(昭和30年)は鎌倉時代の時代小説と思わせておいてフランス人が出てきてびっくり。「なぜあのとき海が二つに割れなかったのか」という信仰の終わりの体験。
すぐさま「なぜ神風は吹かなかったのか」という敗戦体験を連想。

「詩を書く少年」(昭和31年)は超名門男子進学校でされていそうな会話。「卵」(昭和30年)は大学生5人のドタバタと思っていたら童話だった。
「新聞紙」(昭和30年)は想像力のありすぎる夫人の他に類を見ない妄想。

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