2019年6月4日火曜日

アガサ・クリスティー「動く指」(1943)

アガサ・クリスティー「動く指」を読む。高橋豊訳ハヤカワミステリ文庫(1977)版で読む。
THE MOVING FINGER by Agatha Christie 1943
これもミス・マープルもの長編だが、主人公は実質バートン兄妹。
兄ジェリー・バートンは松葉杖姿の傷痍軍人。医者の勧めで田舎でのんびり転地療法へ。ともに独身の妹ジョアナと一緒に田舎町リムストックのリトル・ファーズ邸を借りる。

英国って世界中に植民地を作ったわりに昔から未婚率も高い気がする。クリスティを読んでるとオールドミスが多い。それに元軍人って田舎に邸宅借りれるほどお金があるものなのか。

このリムストックという田舎が、差出人不明の悪質で下品な、事実無根の誹謗中傷手紙が無差別に送り付けられるという事件が起こっていた。
バートン兄妹の家にも「この売女!」「兄と妹じゃないだろ」みたいな手紙が届く。

そんな最中に地元名士シミントン弁護士の妻が手紙を受け取った直後に自殺。やがて女中も戸棚の中から撲殺死体となって発見される。村内は騒然。

のんびり過ごすためにこの村に来たはずのバートン兄妹、こんなはずじゃなかった。
変わり者だらけの村人たちと交流し、ひたすら村人同士の会話を聴かせられる。悪質な手紙の送り主は誰か?捜す。絞り込んで行く。

4ぶんの3ほど読んだところでやっとミス・マープルが登場。だが、教会で編み物をしている老婦人としてジェリーの視界に斜めから入ってくるだけ。村の噂話を聴く。

マープルは最後の最後、ページの残りもわずかになったところで登場し事件のあらましを語る。事件の解決に手を貸す。犯人を罠にはめるために、弁護士の死んだ妻の連れ子ミーガンをけしかける。

真犯人はそれほど意外でもない。ドライな動機。なにか重大なトリックがあるわけでもない。ただ、物事は見えている通りではないということ。マープルはそのへんを見極める。

恋愛小説にミステリーをオマケでつけましたという、クリスティ女史らしいラブコメの末のハッピーエンド。

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