2019年5月15日水曜日

ロバート・A・ハインライン「夏への扉」(1956)

ロバート・A・ハインライン「夏への扉」を読む。実はまだ自分はこのあまりに有名な1950年代古典SFの代表作を読んでいなかった。2009年に早川書房から出た小尾芙佐(1932-)新訳版で読む。
THE DOOR INTO SUMMER by Robert A. Heinlein 1957
この古典的時間旅行SFが日本に初紹介されたのは早川書房1963年福島正実訳。1979年に文庫化。以来、SFのオールタイムベスト的一冊。

どんな話なのかまったく知らないで読んだ。ファンタジーっぽいのかな?と思っていた。ぜんぜん違っていた。猫をバッグに入れ連れ歩く発明家エンジニア男の独白だった。50年代アメリカ映画ナレーション音質で脳内再生。

舞台が1970年になっている。主人公ダンは愛猫ピートと2000年までコールド・スリープする決心。
人体の仮死状態での冷凍保存技術って2020年になろうとした今も確立してないよね?

発明家ダンは会社を興し家事をやってくれるロボットの製作にのめり込むのだが、いつの間にかビジネスパートナー(弁護士)だったマイルズ、秘書で恋人ベンの裏切りに遭い、特許も仕事も奪われ会社を追い出される。ずっと口喧嘩w 
アメリカ人は法律に詳しい。ベンという性悪女が最悪。

で、30年後に目を覚ましたダン。アメリカもロスアンゼルスもすっかり変わってしまっていた。しかも眠ってる間に保険会社が破産していまいダンも一文無し。世間は世知辛い。

そこはさすが1950年代アメリカ。主人公はへこたれない。再び技術者として生きていくために勉強を開始。自分が設立した会社でなんとか職を得る。
たった30年眠っていただけなのに、自分が読んだ感じだと100年は経っていそうだ。
そして、殺してやろうかと思っていたベンと再会。

色々と調査してるうちに自分の記憶との整合性に不審を抱く。そしてタイムマシンで31年前へ。ここから先がややこしい。
自分がした記憶がないことは未来から戻った自分がしていたことだったり、自分がふたりいたり、そういうSF。ドラえもんでも見たw

あとアメリカだからなのか、書類へのサインの場面が多い。株券の譲渡とか、公正証書とか、アメリカの若者なら慣れたものなのか。

コールドスリープから目覚めた人に対して、未来の判事が不快感を述べる箇所には注目した。自分の時代を上手く生きられなかった人を未来の我々に押し付けられても迷惑。そういう発想なかった。50年代にそういうことに気づいていたのがハインライン。

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