2019年5月27日月曜日

江國香織「すいかの匂い」(1998)

江國香織を読むのもこれで4冊目、今回は「すいかの匂い」(1998)を平成12年新潮文庫版で読む。これも友人の本棚にあったので読む。

事前に何も知識がなかったのだが、短編11本のすべてがこどものころの記憶を綴ったようなもの。1ページの文字数が少ないので、大人はすごいスピードで読めてしまう。

「すいかの匂い」
幼少の頃一時期預けられていた東京羽村の家が嫌で家出した話。
シャム双生児?!予想外の展開。まるでムジナかキツネに騙されたような幻想ホラー小品?

「蕗子さん」
家に間借りしていた26歳大学生の下宿人と一緒に、いじめっ子に仕返しをするために落とし穴を掘った想い出。亀を甲羅の中にいる生き物だと勘違いしていて包丁で腹を切り開いた話はホラー。
自分も7歳ぐらいのとき近所の大学生と遊んでたかすかな記憶を思い出した。

「あげは蝶」
新幹線が嫌い。夏の間に行く曾祖母の家が嫌い。いろんなことが嫌いな少女が、新幹線で一緒になった若い女から、ふたりでこの場から逃げ出すことを提案される。
これもすごくよくわかる。子どものころは(今もだが)いろんなものが醜悪に見えた。ラストシーンの映像がいきいきと頭に浮かぶ。

「薔薇のアーチ」
ラストで少女のふるまいがちょっと意味わからなくて怖い。

「はるかちゃん」
ほんの一時期いっしょにすごした子の思い出。ラストで変質者が出てきて怖い。

自分が気に入ったものは以上5点。これが今まで読んだ江國香織でいちばん自分にしっくりきた。どれもこれも、ああ、わかるわかるという感じ。
こどものころの夢と現実がごっちゃになったような、社会の認識がぼんやりしたような、大人たちのやってることの意味がよくわかってなかったころのノスタルジア。

ちなみにこの本はYUIが2006年に「赤いテレキャス」で読んだ本として挙げていた。自分は13年遅れで読んだことになる。
そして、長澤まさみも「学生時代によく江國香織を読んだ」とどこかで言っていたように覚えている。

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