2019年3月8日金曜日

アガサ・クリスティー「象は忘れない」(1972)

アガサ・クリスティー「象は忘れない」を読む。中村能三訳1979年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。
これも100円棚で見つけてまとめて買っておいた1982年第8刷。ページによっては茶色く変色して汚い。
ELEPHANTS CAN REMEMBER by Agatha Christie 1972
クリスティ女史最晩年82歳の作品。エルキュール・ポアロが登場する最後に書かれた作品。
「象は忘れない」とは変わったタイトルだが、英語圏では記憶力のいい例えとして象を使う表現があるらしい。象が忘れないように人間も事件のことは忘れられないというテーマ。

慣れない女流作家昼食会に参加してしまったアリアドネ・オリヴァ夫人。自身が名付け親になったもう何年も会っていないシリヤ・レイヴングクロフト嬢の件で、あまり感じのよくないミセズ・バートン=コックスから話しかけられる。

息子の婚約者シリヤ嬢の両親レイヴングクロフト将軍夫妻は、シリヤが幼いころに、自宅付近の崖の上で拳銃自殺(?)したらしいのだが、夫が妻を殺したのか?妻が夫を殺したのか?調べてほしい。

で、オリヴァ夫人はポアロに助けを求める。聴いてきた話を聴かせる。将軍夫妻の周囲にいた人物たちから聴いた話からだんだんと事件の様子がわかってくる。
将軍の妻には精神病の双子の姉がいた?この姉も事件の前に夢遊病の最中に崖から転落死?かつらを4つも持っていたのは多くない?姉の旦那の死後に子どもの不審死?将軍夫妻の赴任先のマラヤでも子どもの不審死?

読んでいてぜんぜん話が頭に入ってこない。何がどう繋がるのか読めてこない。英国の老人同士の会話をひたすら聴かされる。人は実際に起こったことでなく、起こったと信じてることしか話さない…。

誰が犯人か?どのように殺害したのか?というような推理小説でない。ぼんやりとしていた全体像がだんだんとハッキリしていくまでを描いている。

正直、この真相はなんとなく途中でイメージできていた。なので驚くことでもない。
推理小説でなく愛の悲劇のドラマ。会話形式なので戯曲の舞台や映画を見ている感じ。味わい深い恋人たちの愛の小説。クリスティ女史晩年の作風。

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