2018年12月27日木曜日

内田康夫「贄門島」(2003)

内田康夫「贄門島」(2003)を読む。平成21年角川文庫版(上下巻)で読む。これは友人の本棚にあったので読む。

自分、19歳を最後に内田康夫を1冊も読んでいない。たぶんこれが3冊目ぐらいの内田康夫。
浅見光彦は架空の人物だが北区にゆかりのある人物ということで親しみは持っていた。だが、本としてそれほど関心は持てていなかった。この名探偵についてあまり予備知識を持っていない。

浅見の今は亡き父親(大蔵省官僚)が、南房総にあるという架空の島で体験した生死の境をさまよった事故と不思議な体験が主題。

平成に起こった様々な事件を、内田康夫が浅見光彦を通して語らせている。北朝鮮による日本人拉致と不審船事件がなければ生まれていなかった作品。平成が終わろうとしている今、読むのにぴったりかもしれない。

民宿も駐在所もない。島内に車は2台だけ。公共事業もない。外部との接触をなるべく断って暮らしている贄門島の人々。対岸の集落とは犬猿の仲。
だが、豊かな漁場を保っているために海産物資源でやっていけているという設定の島。

浅見はたまたま出会った同業者と島に渡ったのだが途中ではぐれてしまう。後日水死体で発見。重要参考人になる。
高圧的で無能な警察から取り調べ。だが、兄が警察庁幹部とバレると刑事たちは低姿勢。あー、やだやだ。おそらく内田先生も警察が嫌いなんだろう。

島付近で不審船を目撃した漁師が不審死、女教師の失踪、地元選出議員の秘書の小田原での謎の死。

これ、なんにも期待せずに読み始めたら、意外に面白い。90年代以降の新本格の潮流と別の我が道を行く新社会派。歴史ウンチクを多く盛る。
小野不由美「黒祠の島」のような閉鎖的な島の秘密が暴かれるというエンターテインメント長編ロマン。
島で育って東京へ出たヒロインと浅見のちょいエロラブコメ要素もw 

自分は十分楽しめた。文体を古めかしくすればきっと横溝正史っぽい。てかクオリティに置いてほぼ横溝。

え?浅見光彦って33歳なの?これまで何人も浅見を有名俳優が演じてきたけど、上品でおっとりした感じを出せるぴったりな俳優って思いつかない。

北区西ヶ原の平塚亭が出てきて驚いた。昔はよく滝野川図書館まで自転車で行っていた。途中にある和菓子屋が気になってはいた。あそこが浅見光彦行きつけの店だったのか。

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