2018年10月12日金曜日

是枝裕和「三度目の殺人」(2017)

是枝裕和「三度目の殺人」(2017 ギャガ 東宝)をやっと見た。もう重くて長い映画を観る集中力がぜんぜんないw

昨年度の第41回日本アカデミー賞で8冠。邦画史に名を残す1本だろうから義務感で見る。広瀬すずも出ているので見る。
なんと是枝監督によるオリジナル脚本?
社会派サスペンス法廷劇だと推測。これまでの是枝監督作になかったテーマっぽい。
広瀬すずは「海街diary」(2015)に続いて是枝監督に重要な役を用意してもらい呼ばれた。それは女優として胸を張っていい誇らしい栄誉。そして是枝監督はこの「三度目の殺人」と「万引き家族」で完全に巨匠監督へ。

強盗殺人犯(役所広司)の弁護を担当するのが福山雅治。吉田鋼太郎から事件を引き継ぐのだが「自白してるしな…」
なんとか死刑を回避するために頑張るけど、ガソリンに火をつけて財布を盗んで…「やっぱ、死刑だろうな」

拘置所での謁見が軽い感じ。弁護方針は焼肉屋でカジュアルに会議。福山との弁護士事務所が佐賀町の有名ロケ地だ。
それにこの弁護士がドライ。「理解とか共感とか要らない」「どっちが本当かとか要らない。役に立つ方を選ぶ」
司法の現場をいろいろリアルを感じられた。

容疑者役所が供述をコロコロと変えていく。相手の言いなり。こうじゃないかな?という見立てにすぐ乗っかる。自己というものを持たない耐え難い軽さ。
被害者の妻から殺害を持ち掛けられたなんて、嘘だとしても最悪。
開始30分で最初の衝撃ポイント。容疑者宅を被害者の脚の悪い娘(広瀬すず)が訪れていたという大家の証言が!?ふたりは一体どういう関係だ?北大を受験?

カナリアを飼っていたのだが死んでお墓をつくったという話を聴いて、福山は掘ってみる。次の月の家賃も早めに払ってる。なにかおかしい。
役所は過去に留萌で借金取り2名を殺害し放火して服役してた。当時もやっぱり供述をコロコロ変える中身のない人物とみなされていた。担当したことのないタイプの被告に戸惑う福山。

役所と広瀬が雪合戦。そこに福山も居て雪原に寝転ぶ…、なんだこの夢シーンは?
福山と役所、検察と弁護側と裁判所、すずと役所、いろんな場所での忖度ゲームのリーガル・ハイ。
まさに盲人が巨象を触っているかのごとし。ぜんぜん真実と結末の予想がつかない。

「三度目の殺人」というタイトルは合っていないように感じた。これを法廷ミステリーだと思って見てしまった人はモヤモヤしたまま終わる。
現実はそんなもの。こうじゃないか?と推測はできても、誰も正解かどうかは教えてはくれない。
真実とか正義とかわかりやすくスッキリ提示して四角くわかりやすく娯楽作に治めないのが映画人是枝。

124分間ずっと引き込まれる映像と役者たちの芝居が素晴らしい。見ていてまったく飽きなかった。もっと早く見るべきだった。つまらないという人もいるけど、自分には面白かった。

瀧本幹也カメラマンの映像、ルドヴィコ・エイナウディの室内楽、パフュオタにおなじみ種田陽平の法廷セット、ぜんぶが適切。
市川実日子の冷徹な検察官、吉田鋼太郎弁護士の芝居もひたすら良い。満島真之介という俳優もこんなに良い演技をするのかと見方を改めた。
そしてやっぱり広瀬すず。そこにいる存在感と空気感と表情と何もかもが適切。そして吐息のような声質が聴いていて心地よい。
日本アカデミー最優秀助演女優賞も納得。映画関係者たちはすずの素質を正しく見抜いたとしかいえない。

李相日監督の「怒り」と似たような役どころだったわけだが、「三度目の殺人」のほうが断然良い。
広瀬すずは女優としてさらに成長。映画の世界で女優として羽ばたいていくチャンスを逃さなかった。スターの資質を見た。

PS. 明日、フジテレビ「土曜プレミアム」で地上波初放送。早い!しかもノーカット。見ろ!

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