2018年9月18日火曜日

平手友梨奈「響 -HIBIKI-」(2018)

この映画は封切り公開前から劇場に観に行こうと決めていた。欅坂46でリアルにカリスマ問題児エース平手友梨奈が主演を務める「響 -HIBIKI-」(2018 東宝)を見てきた。

公開日から「ぜんぜん客が入ってない!」というツイートを目にしてちょっと心配になった。本来なら公開第2週3週あたりの空いた日に行くのだが、今回は義務感もあって公開4日目に劇場へ。3連休最終日の最終で見て来た。客は我々を含めて15人だった。

小学館ビッグコミックスペリオールで2014年から連載開始、2017年のマンガ大賞受賞作。これまでに第10巻まで単行本が発売。自分はマンガを読まないので何の予備知識もなく見る。

テレビに番宣ゲストで出演してるのを見たところ、「君の膵臓をたべたい」が期待通りのものを期待通りに出す何のクセもない作風だったように、月川監督は平手さんという難しい少女と一緒に仕事をしていける物腰の柔らかい紳士だったように感じた。
監督によれば平手さんの「つまらない」という挑戦的なひと言で脚本も書き換えたという。それ、驚愕の事実。
平手友梨奈が常識外れの天才文学少女を演じてる。ヒロイン鮎喰響を平手が演じることは原作者もお墨付き。

この平手の目つきが完全にヤバい。終始一貫してこれ。確たる自己と自信を持った超絶変わり者女子高生。ロジックで相手を徹底的に追い込み反論の余地を与えない。ときにバイオレンスを爆発させる。文芸部にいる不良も、誰とでも仲良くやる部長も、自分を曲げずに手なずける。

この作品の登場する大人たちはほとんどが、ヒロインにとっては許容できない軽さとだらしなさを持ったぬるい大人。
自分、文芸作品にも文芸誌にも関心がなく、新人作家にもあまり注意したこともないのだが、文学の世界ってこんななの? 鮎喰響も北川景子がいなければ危うく廃棄処分。

元芥川賞作家で評論家の北村有起哉が平手にハイキック一発で倒されるシーンは爽快。自分も嫌味な奴は同じように倒したい。
柳楽優弥は響と同期の新人作家だが傲慢上から目線の嫌な奴。授賞式でロリータコスプレ響がパイプ椅子フルスイングで後頭部を強打。尊敬できないヤツには敬意は払わない。容赦しない。
地下鉄のホームで柳楽の背後にピタッと響が立つシーンが恐怖!w 異常に面白かった。

小栗旬は10年の間まったく他人の心に響くような作品を残せず焦る作家。両親の位牌を横に焦燥と悲壮感ただよわせて、根を詰めてパソコン画面を見つめながらカタカタとキーボードを打つ。

とにかく平手さん演じる響には最初から惹き込まれた。いう事が全て正論。相手に逃げ場を与えない。まるで革命家のリーダー。

だが、萌えシーンも多数。文芸部員をペンでつむつむするシーン、海水浴場で砂に埋まってるシーン、部屋でぐでぐでした姿で電話してるシーン、動物園で無邪気にはしゃぐシーン、なにもかもが良い。部屋にはなぜかカワウソのぬいぐるみw
最大の見せ場はアヤカ・ウィルソンとのビンタの応酬シーン。こいつがエンドレスで続くのか?と思う瞬間に相手が「あ”~」となって止める。
ムラカミハルキのような作家を父に持つものの、凡庸なJK作家レイカを演じたアヤカ・ウィルソンは助演女優賞を与えていい活躍。この役どころが切ない。
響とレイカは容姿と雰囲気が違いすぎていて友だち同士に見えない。

ぐだぐだ引きずってたレイカが文芸部に戻ってくるシーンで、平手響はただ一言「おかえり」と言う。このシーンを見て、今泉が欅坂に帰って来た時に、こんなふうに「おかえり」って言ってやってくれたらなあ…と思った。志田にも言ってやってくれ。
この校舎落下シーンも、踏切での列車緊急停車シーンも、普通に死んでたかもしれないバカ事故。このヒロインは何も恐れるものはない孤高の存在。欅坂の平手さんそのもの。
見たこともないようなキャラで新鮮だった。鮮烈だった。平手友梨奈以外にまったく考えられない。

芥川賞直木賞記者会見の記者たちがこれ見よがしに聴こえるように不平を言う。ラストの警察官もオトナとして15歳の女の子に他に言う事ないのか?!マスコミと警官が一番不快な存在。たいていみんな失礼。とにかく大人たちはみんなクソという映画。

常識的な編集者を演じた北川景子は特に印象に残った演技をしたというわけでもなかったけど、これはこれで自身の役割に徹した確かなサポート。ポニーテールスーツ姿に清潔感があって美しい。顔がつるっつるすぎるのが気になったw

北村有起哉に謝罪するために、北川が平手響に頭を下げさせようとするも平手が頭を下げないシーンは平手のアドリブだという。これを知っててこのシーンを見るとさらに面白い。
エンドロールで平手友梨奈のソロ曲が流れた。これがどこのSSWだよ?って曲。秋元康&ナスカによるクオリティの高いうっかり名曲。

平手友梨奈はこの映画の主演を務めあげたことを誇りに思っていい。100点。ますます平手がカリスマに見える。

「君の膵臓をたべたい」があまりに普通な映画で、自分は月川監督をナメていた。原作が面白かったのかもしれないけど、映画として飽きずに面白く最後まで見れた。
教室に光と木立の影が差し込んでる映像は美しくてハッとした。心のこもった画づくりと演出をしていたように思えた。
脚本家も他の役者もすべて適切にしっかり仕事をした。期待していた以上の出来だった。

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