2018年9月17日月曜日

白石一郎「孤島物語」(1995)

白石一郎(1931-2004)を初めて読む。「孤島物語」(1995)を新潮文庫で読む。こいつも友人の本棚から借りた。
自分、あまり時代小説を読まないけど、そこにあるから読む。読みたい本を読むのでなく、そこにある本を義務感で読む。

「孤島」をテーマにした短編時代小説集。順番に読んでいく。

江戸山狼(佐渡島)
佐渡の金山に労働者として送り込まれた江戸無宿人たちと、大柄で顔が怖いという理由で無宿人を使役させる現場の親方にさせられた男の話。
自分、昨年佐渡相川の間歩を実際に見て来たので感慨深い。

無宿人とは言っても何も悪いことはしていない。「死んでもかまわない」という究極のブラック職場に送り込まれる。島の農民「あんなものは人間のする仕事ではない」

出水騒動の最中に島抜けするラスト。主人公は「やりやがったな」と思いつつ、なんとか逃げ延びろと心の中で思う。爽やかな味わい。

鳥もかよわぬ(八丈島)
関ヶ原の合戦後に行方不明になっていた備中美作57万石大名・宇喜田秀家は生きていた!という書状が泉州堺の母・円融院の元へ届く。
秀家は薩摩の島津の元へ、そして八丈島。秀家と一緒に絶海の孤島へ送られる二人の息子、家臣、そして下女たちの気持ちは?この短編もちょっと切ないけど爽やか。

三年奉公(五島列島)
五島藩にあった三年奉公の制度が嫌でたまらず命がけで平戸へ渡海する女。そして、女の手助けをする島の男ふたりの物語。これも爽やかな味わい。

金印(志賀島)
謎の金印を掘り当てた志賀島の甚兵衛、そして学者・亀井南冥の大興奮w このへんのやりとりを小説で読むのは初めて。ぜひ子供たちのためにもドラマ化希望。

悪童(能島)
自分、能島がどこかわからなくてgoogleで調べた。愛媛県今治市にある。しまなみ海道にある。
この作品がまるで「クレヨンしんちゃん」の戦国時代タイムスリップもののような話。小学校高学年から中学生に読ませたい。

倭館(対馬)
釜山の倭館でのふたりの対馬藩士の話。対馬藩と朝鮮との貿易がどのようなものだったのか初めて知った。
人口3万人の対馬は島民を養える米が不足し朝鮮から輸入せざるをえなかった。しかも朝鮮側は嫌々しょうがなく貿易していたというようにこの短編では書かれている。

韓国ではときおり地方議会で対馬の領有を主張するそうだが、帝国主義や秀吉と関係ない江戸時代に、朝鮮は江戸幕府に対馬藩の朝鮮への帰属を提案もしていないように思える。

入墨(隠岐島)
これも流人の話。佐渡から漂流してきた男女が加わって運命が動き出す。
隠岐のこともこの話を読んで地図を見たりしてみた。まだまだ行ったことのない島がたくさんある。

どの短編もシンプルで薄味かもしれないがどこか爽やか。松本清張や新田次郎みたいな鬱要素がないので、中高生にもオススメ。

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