2018年7月29日日曜日

吉岡秀隆「悪魔が来りて笛を吹く」(2018)

7月28日にBSプレミアムで待望の「悪魔が来りて笛を吹く」の新作が放送された。前回の長谷川版「獄門島」で今作をほのめかされてから2年待たされた。日本中の金田一ファンがわくわくして待ち構えていた。

自分、吉岡秀隆による金田一耕助のビジュアルを最初に見たとき、白髪が多すぎる!と驚いたし、ちょっと受け付けなかった。
「純くんじゃん!」という朴訥喋りは金田一さんのキャラに合っていた。

はかま姿があまりしっくりこない。石坂金田一のような、もっと汗とあかが染みついたような汚らしい着物と一体化したような金田一さんはもう望めないのか?どの登場人物にも昭和20年代の感じはなかった。
今回の脚本も「獄門島」と同じ喜安浩平。演出は吉田照幸監督。
2時間ドラマのはずなのに、なんと開始1時間15分で犯人が分かってしまうという事態。
それ、激しく戸惑った。「え?90分ドラマ?」と時間を確認してしまった。

やっぱり史上最悪なインセストタブーがおぞましすぎる。地上波ではできないドラマだったかもしれない。
今回のドラマ化では椿家の女中お種と、秋子の乳母・信乃が脚本で消された。その代わりに玉虫伯爵の妾・菊江は目立っていた。指がないという設定を忠実に再現してて、金田一さんに見せるシーンがあって驚いた。
今回の菊江役は倉科カナという女優さんだが、自分はこの人のことをあんまりというかほとんど知らない。

すべての元凶・新宮利彦は村上淳だった。この人もまったくイメージが違う。元華族らしくない極悪チンピラだった。もっと病的でネチネチ蛇みたいな気持ち悪い人がよかった。
椿子爵の須磨での足取りを聴き込み捜査する上で登場する旅館の女中が橋本マナミ。原作ではこの旅館の女将さんがとても目立っていた印象だが、今回のドラマ化では女中さんを目立たせた。
原作のイメージと違ってとても上品で隠せないエロスを漂わせていた。この人が椿秋子だったらよかったなあw

ラストまで金田一さんの語りが長すぎた。華族のおぞましい乱れまくった関係が明かされる。
「語りたくないけど真実を知りたいというのなら語ろうか」という態度なので、どうしてもドラマがぐずぐずしてしまう。

史上空前に真実を語ることに苦悩する金田一さんなわけだが、本当の真実(これ以上悲惨で酷い出生の秘密はない)の自覚のない犯人…というのが新機軸。
「犯す」とか「まぐあう」とか、普段の日常ではあまり聴きたくない言葉だw

ラストのフルート楽曲に込められた秘密のメッセージは大げさに苦悩しつつも説明せずに流した。こんな控え目な表現と演出で「悪魔の誕生」をわかるようにしてほしかった。

想像以上に狂った終わり方だった。エグすぎた。等々力警部の最後のアレはダメでしょ。
この作品は原作の面白さを映像化するのは難しいと感じたのだが、攻めの新解釈リブート横溝正史として意義を感じた。
須磨の玉虫伯爵別荘跡が燈籠以外にみごとに草のみ!他に何もない!これではどこかも特定できない。

今回、椿子爵のお屋敷は三重県桑名市の有名な建物を使用した。金田一さんの下宿先は五個荘近江商人屋敷。これは行ってみたい場所ではあるが、ロケ地マニアに行きたいと思わせるような新鮮な場所はなかった。

視聴者の住んでいる地域によって違いがあるのだが、ウチは放送開始序盤でブロックノイズが発生したりして画面が乱れた。台風の雲が厚かったに違いない。
完全な状態で見るために再放送が待たれる。だが、自分はこの作品は繰り返し何度も見たいとは思えない…。

今回もまた次回作として「八つ墓村」を期待させる終わり方だった。
(ちなみに、吉岡秀隆は子役時代に映画「八つ墓村」に出演している。)

だが、自分はあんまり八つ墓村は好きじゃない。あれもどうやったってそれほど面白くはできない。でも、美也子が長澤まさみだったらいいなあw

0 件のコメント:

コメントを投稿