2018年4月30日月曜日

岩井俊二「四月物語」(1998)

岩井俊二監督作品リストで「スワロウテイル」と「リリイ・シュシュのすべて」の間にあるのが、当時CMにドラマに大活躍で人気絶頂の若手アイドル女優だった松たか子が主演した「四月物語」(1998 ロックウェルアイズ)だ。

2016年の「リップヴァンウィンクルの花嫁」という映画が、カントクの惚れ込んだ若手女優を輝かす正しい映画だったように感じた。だがその18年前の「四月物語」がもっと正しいアイドル映画だったような気がしたので、確認のために10数年ぶりに再視聴。

この映画を観ると1998年という年が思ってた以上に遠い昔のように感じる。実際20年前の映画。そんな画質と色合い。すっごくノスタルジー。
この映画、助監督が行定勲だったって初めて知った。撮影は多くの岩井俊二作品で撮影を担当した篠田昇カメラマン。「世界の中心で愛を叫ぶ」(2004)が遺作となった。

映画冒頭がいきなり松本幸四郎一家総出演で、東京の大学へ進学上京する娘を見送る。なにげに微笑ましいシーン。
駅長さんが塩見三省さんだ。(脳出血で倒れて以来めっきり老け込んだようで心配だ。)

ヒロインは団地みたいなアパートに引っ越し。このシーンでの桜の散り方がかなり大げさすぎる。雪のごとく桜が降り続けている。引っ越し業者の若者たちがやや存在が強すぎる。そこに停車していたタクシー運転手に住宅地図片手に「えーとぉ~」ってシーンがまるでCMのように作為的で自分はあんまり好きになれない。

部屋に対して荷物が多すぎる!というシーンは今見ても面白い。放棄した荷物はどこへ?ってちょっと気になった。

だが、なんといっても松たか子。当時の松たか子さんは今の乃木坂三期生・岩本さんそっくり!w 瀧野由美子にも似ている。まだ20歳ごろなのでとにかく初々しい。眉毛の角度が凛々しい。頬の張りが今と違う。
この当時の松さんは今で言ったら土屋太鳳に相当する若手女優だったのではないか?と思った。

入学して最初の自己紹介のシーン。ヒロインが「趣味はレコード鑑賞です」と言ってて軽く衝撃。あと、なんでセーター着てるん?って疑問に思ってたら同級生から突っ込まれてた。
ヒロインがかなり周囲とコミュニケーション不全。話しかけてくる女とまるでスムーズな会話にならない。美人なのに周囲に男が寄ってこないのも不思議。

自転車を買うシーンで店頭にあった等身大広告看板が菅野美穂だ!w あれ、ちょっと前までたまに色あせた同じものを見かけた。
ベンチで本を読んでる松さんが逃げ去るように移動する理由を示すカットのカメラの追い方が面白い。

この映画、67分と短いのに、なぜか劇中劇(偽クロサワ映画風)まで意味なく挟んでくる。織田信長(江口洋介)の声と喋りが今とぜんぜん違う。
独りで映画を観ている松さん目がけて、謎の中年男がだんだん接近してくるシーンがどう笑っていいかわからない。以前見たときはまったく気づかなかったけど、光石研さんだったんだな。

そして入部するサークルがなぜかフライフィッシング部w 部長が津田寛治さんだ!今とだいぶ見た目が違う。「リバーランズスルーイットって映画見たことあるかな?」金属的な声質は変わってない。校庭で竿を振る練習をしながら女友だちと恋の会話。

映画開始38分にしてやっとヒロイン憧れのセンパイ田辺誠一登場。だが二人は目線を合わせるも1回スカす。
アパートの隣人をカレーに誘うも断られる。でもせっかくだからと思い直してやってきた優しい隣人にひとりでカレー食べさせて家族と電話継続シーンとか、意図がよくわからない。

高校時代回想シーンで松さんがヴァイオリンでハンガリー舞曲第5番を弾いてるシーンがあってちょっと驚いた。だが、運指とボウイングを見る限りまったく弾いてないようだw
松さんといえば「カルテット」だが、こんな昔にヴァイオリンと接していたって知らなかった。

このヒロインの別方向を見つつセンパイとの間合いの詰め方が今見るとちょっと面白い。センパイのロッカーの名札を持ち去る松さんが面白い。

ヒロインは画廊の軒先で雨宿りしてセンパイとの会話の余韻に浸る。
政府高官がセクハラ魔王のこの国で、90年代にあんな英国紳士みたいな人(加藤和彦)いないだろ。
あのストリートが雑然さがまったくなく、まるで日本じゃないみたい。調べてみたらやっぱりロケ地は幕張新都心。

10数年前に見たときはまるで面白さが分からなかった映画だった。当時気づけなかった面白さにいくつか気づけたけど、やっぱり全体としてそれほど面白くも感じない。

映像は美しい。日本映画の伝統を感じられる雰囲気のアイドル女優映画。岩井俊二には自分の好きな女優で映画を撮ってもらいたい。

この映画のヒロインは旭川北高(この高校は実在する!)から武蔵野大学(当時はまだ存在しない架空の大学だった)に進学する。旭川西高から武蔵野美術大学に進学した乃木坂46橋本奈々未はこの映画を観たかな?って、ちょっと想った。

0 件のコメント:

コメントを投稿