2018年2月17日土曜日

エラリー・クイーン「シャム双子の秘密」(1933)

エラリー・クイーン「シャム双子の秘密」の角川文庫新訳版(越前敏弥・北田絵里子 訳)を手に入れた。
2014年の初版だった。多少水ヨレしてる箇所があったけど100円という弱気な価格がついていたので買って帰った。
THE SIAMESE TWIN MYSTERY by Ellery Queen 1933
これ、たぶん10代のころ1度読んでる。ミステリーはオマケみたいな山火事ディザスター小説だった気がする。
今回、新訳版で読み返してみた。やっぱり山火事と「カニ人間」以外の要素は何も覚えていなかった。

愛車デューセンバーグで父クイーン警視と旅行中のエラリーくん。悪路を走行中に山火事に巻き込まれる。もうこの一本道を行くしか他にない。その先にある館を訪問。ひと晩の宿を請う。

こいつが山火事によって下界から遮断された館というクローズドサークル。山火事が迫りつつあるという切迫した状況で物語が進行。

そこで主人の外科医が書斎で射殺される。闖入者にすぎない2人は身分を明かして捜査開始。その場にいただけで上から目線で尋問されたり命令されたりする。もし自分が事件関係者になったら嫌だな。

トランプの「スペードの6」ダイイングメッセージから「夫人が犯人だ!」と決めつけるも、トランプは被害者が自ら掴んだものではないことに気づいて撤回。

次に、破かれたトランプと指紋の付き方のロジックから、犯人が左利きであることを証明して左利きの人物を捜す。こいつが犯人だ!
なんか、あてずっぽうなエラリーがやらかしまくり。

だいたい殺人罪はほぼ死刑の時代に、大した証拠もなく犯人呼ばわりされたら、誰だってパニくる。
得意げに犯人を指摘しておいて二転三転させるエラリーくんも酷いが、容疑者が逃ようとしただけで後方から狙撃し弾丸が肺に達する重傷を負わせる父クイーンもクズ。「だって犯人だって云うから」とか言い訳がヒドすぎる。

麓の消防本部から単葉機によって投下された手紙が「ごめん。あとはそっちで何とかして」感が酷すぎる。

相変わらず犯人を絞り込むロジックはわかるようなわからないようなもの。
だが、今回は警察の鑑識がいないので証拠もない非常事態。かなり特異な展開を見せる1冊で、犯人のミスリードの仕方は新鮮なパターンだった。

以前読んだときは山火事がどのようなものかよくイメージできなかった。湿潤な日本だと山火事といってもぷすぷす白い煙が立ち上ってる映像ぐらいしか見たことない。
だが、煌々と紅く山全体が燃えるカリフォルニアの山火事映像を見て初めて「シャム双生児」の山火事がよくイメージできた。

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