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2016年3月7日月曜日

横溝正史を読む~「貸しボート十三号」~

久しぶりに横溝正史を読んでみた。というのも昨年末に山梨市の横溝正史館に行ったことで、横溝正史マニアというものに触れたから。

そして、「苦役列車」において主人公・森山未来と書店バイト女子大生・前田敦子の共通の趣味が横溝正史だったというシーンを見て。「獄門島とか好き♥」w

で、いつものようにBOの100円棚を物色していてこれと出合った。角川文庫版「貸しボート十三号」(昭和51年刊)。

もう紙が酸化しまくっていて茶色い。普通なら引き取ってもらえないであろう古い文庫本。自分はこういう古い本にむしろ味を感じる。

横溝正史を読むの、たぶん中学生以来w 「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」「本陣殺人事件」…、読んだ当時はどれもピンとこなかったし、どれもイマイチだなあって感想だった。

自分が魅力を感じた金田一耕助は、市川崑と石坂浩二が創作した金田一だと考えるようになった。当時は活字で読む金田一さんにそれほど魅力を感じなかった。

だが、自分も昔の作家の本なんかをこれまでだいぶ読んできたし、田舎なんかを旅したりして、子どもの頃はイメージできなかったものを見聞きしたりしてきたので、今読んだら面白いかもしれない…と期待した。

今では出版されているものはごくわずかだが、昭和50年代は横溝正史がブームで、この角川文庫のシリーズでたくさん出版された。あんまりBOでは状態のいいものを見かけたことがない。

この版の表紙イラストが、好きな人も多いのだが、自分は「バカなの?」って思ってしまうほど趣味が悪いw これ、読もうかな…と思っても、表紙イラストの趣味が悪すぎて、やっぱやめとこうって棚に戻したことが何度もあるw

この本に収録されているのは中篇の「湖泥」(昭和28年 オール読物)、「貸しボート十三号」(昭和32年 週刊朝日別冊)、「堕ちたる天女」(昭和29年 面白倶楽部)の3作品。

自分が期待する横溝正史って、死体の第一発見者がぎゃぁぁ~って叫び声をあげるような猟奇な状況、そして、戦争に人生を翻弄された犯人のウェットすぎる恨みによる動機。そして昭和20年代の田舎の風景。

その点で「湖泥」は自分の横溝イメージに一番近かったけど、米搗き小屋って何?これが自分の脳内画像ファイルになくてイメージできなかった。

この作品はやりようによってはいい映画にできるかもしれなかった。犯人にもっと哀しい過去を書き足して。これは古谷一行版でテレビドラマ化されているらしいけど、自分はもう古谷判は見ないと思う。

横溝作品の犯行は、犯人が予想外のハプニングに出くわしてさらに複雑怪奇化してしまったパターンが多い。「貸しボート十三号」もそんな感じ。浜離宮沖を漂うボートから、首を半分切断されかかった男女の遺体が発見される!って場面からスタート。

複雑すぎて、そんなの読者の誰も思いつかないだろ!って展開。人間の欲望と、他人を思い遣る愛によって、殺人現場が発見者からすると「なんだこりゃ?!」って様相になってる。「病院坂」もこんなパターンだな。

「堕ちたる天女」は読んでいて、江戸川乱歩の「蜘蛛男」を連想した。あと、大久保清事件。
これは読んでいて時代を感じた。だが、誰と誰が正体が同じとか、入れ替わってるとか、これも横溝っぽい。

昔の日本の人権感覚は現在からみると可笑しい。この作品ではレズビアンという言葉が出てくるのだが、レズビアンに「同性愛病患者」って文字がアテられているw 今とは時代がまったく違うんだなあ。

「湖泥」でも、美人と評判だった被害者女性が「義眼」だと判明して、駐在さんが「畜生!だましてやがった!」って反応はおかしいだろ。昔は肉体的ハンディキャップが今より酷く否定的に捉えられていた。人権は数世代かけて改善されていったんだなあ。

今回この本を読んでみても、まだ横溝正史にハマるほどの魅力は感じなかった…。金田一さんってタバコ吸うんだな。

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