2015年12月21日月曜日

綾瀬はるか 「ハッピー・フライト」(2008)

矢口作品の中でまだ見ていなかった「ハッピー・フライト」(2008)をようやく重い腰を上げて見てみた。綾瀬はるかが出てるし、矢口作品の中でも評判のいい1本だし。

これを今までまったく見ようとしなかった理由は、笑いが自分と合わなそう…って思ってたから。

矢口作品はまったくの素人が新しい世界に飛び込むテーマが多い。視聴者も主人公と同じ目線で飛び込むことになるのだが、今回は専門的な職場。

綾瀬がひとり浮き上がった新人。周囲からの殺伐とした白い眼差しをものともしない道化役者。だが仕事のツラさキツさに涙も見せる。
「じぇんじぇん足りましぇ~ん(泣)」の言い方がちょっとフザけすぎw

機長昇格訓練OJT中の田辺誠一。大変な事態に出くわす。この田辺がピッタリとはまりすぎですばらしい。

エコノミーのオーバーセール対処では地上スタッフが客を観察してることもわかった。温厚そうなビジネスマンが機内持ち込み荷物のことを言われただけでブチ切れ大声を出す恐怖映像。大声を出して相手を威圧することは傷害と同じ…って立法化してほしいわ。そうすれば接客スタッフの負担をメンタルで軽減できるのに。

次は一体どんなトラブルやクレームが…って怖くてしかたない。自分はCAに何かたのんだことない。できないからって罵倒するとか、どんだけ偉そうなんだ。自分が監督なら糞クレーマーだけは業火に焼かれて死ぬラストにしてハッピーフライトとする。あんな何もなかったようなラストだと気が収まらない。見ていてイライラする登場人物が多い。

膨大な登場人物たちそれぞれが個人的な事情を抱え、仕事にプライドを持ち、他者を見下し、その1日を乗り切る。航空業界内の人々も普通の人間だといいたいかもしれないが、楽しいというより見ていて不安と不快感。前半は見るのがやや苦痛。

鳥を追い払う空砲を妨害しようとする市民活動家が出てくる。こいつがすべての元凶。ひとりひとりが規則を遵守していかないと大変な事態になりかねない例が次から次へと出てくる。勝手な思い込みで事故すれすれの危機をまねく。

ネタバレするとバードストライクしたカモメがピトー管に引っかかっていたのに気づかず飛行を続けていた。さらに地上には台風接近に伴う積乱雲と雷。OCCが電源オフでコンピューターが使えない。いろんな些細な出来事が積み重なってるけど、事故調査でこれらのことはすべて判明するのだろうか?責任追及できるのか?ゴネ客の荷物で機長が手首を怪我してるし。

後半は「アポロ13」みたいになっていく。機上と地上のスタッフ、登場人物がみんなプロの顔を見せて危機に対応。「プロジェクトX」のような現場の集中と臨機応変、創意と工夫に感心。

役者もエピソードもモノもすべてが精緻に配置され組み込まれている。だが、内容が盛りだくさんすぎる気もする。テレビドラマにして5話ぶんのボリュームがある。この映画の綾瀬は脇役にすぎない。

やっぱり矢口史靖のセンスのすべてが面白いわけではない。いくつかのネタは笑えないし不要。
新婚カップルは「飛行機はそう簡単に落ちません」ってセリフを田畑智子に言わせたいためだけに登場。結果この新婦は2度と飛行機に乗らないだろう。
綾瀬の両親の正露丸とか、そんな誰も笑わないネタも不要。田辺の「あがってま~す」なぞかけもいらない。

スカッとしたのが、CAのミスでファーストクラスのデザートが全滅、料理が得意な綾瀬が炊飯器でケーキを作って対処のエピソード。

そして、若い整備士がスパナ紛失で顔面蒼白、全員が必死に捜すのだが、他の整備士が誰も若い整備士を責めてなくて、社会科見学の小学生が持ってました…って判明してみんな心から喜んでいるのを見たとき。いい仲間、いい上司のいるいい職場だなって。けど田中哲司は頭ごなしにどなるので嫌。
それと、ぼんやり上司の岸部一徳が危機で意外に有能な指揮官ぶりを発揮するところ。

PS. 綾瀬はるかが今年も紅白歌合戦の赤組司会に選ばれた。なにげに綾瀬は国民的女優なんだな。30歳なのでもういつ結婚してもおかしくない。

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