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2015年11月21日土曜日

司馬遼太郎 「歳月」(1971)

司馬遼太郎にこんな作品があることを知らなかった。108円でそこにあったので買っておいた。
「歳月」(講談社文庫)という本。自分が手に入れたのは1999年の第69刷。ぶ、分厚い。700ページに及ぶ大作。

この本の主人公は初代司法卿・江藤新平。自分はこの人を名前しか知らなかった。たぶん明治維新の重要人物。日本史音痴の自分は明治維新における「薩長土肥」の「肥」を「肥後」だとカン違いしていた。「肥」とは肥前佐賀藩のことだった!
自分はこの本を読むまで、大隈重信も佐賀県人だってまったく知らなかった。

江藤新平という人はかなり個性的で人と違う運命をたどった。30代半ばまで佐賀で極貧の蟄居生活。それがいつの間にか明治政府の参議という重要人物になっていた。

鎖国日本の中でさらに鎖国をしていた肥前佐賀藩から京都へ出て帰国。死罪になるところを藩主・鍋島閑叟に救われる。江藤を生かしておいたことで鍋島家は明治以降も生き長らえる。

この本の真ん中三分の一は明治新政府の内部のドタバタ。
維新の英雄たちはみんな革命と言う破壊者なだけで、新国家を建設するのに向いた人は誰も居なかった。江藤を除いて。
司馬によれば、西郷も板垣も軍人なだけでアホ。三条実美は上品なだけで無能。木戸孝允も心配性過ぎて鬱で存在感まるでなし。明治の太政官の参議たちはみんなダメ男。江藤と大久保を除いて。

江藤新平は頭が良くて弁がたつ。それに西洋の法律に唯一明るい。
だが、やがて征韓論というやつにぶつかってしまう。

征韓論、これ、小学生でも知ってる言葉だけど、今まで自分はまったくよくその意味がわからなかった。中学高校の授業でやるより、この本を読んだほうがなんぼかよくわかると思う。司馬は明治政府の幹部たち、征韓論派をみんな「子ども」と斬り捨てる。

韓国(朝鮮)はその歴史上日本へ敬意を払ったことが一度もない。日本以上に国際情勢に疎くて隣国にありえないほどの無礼を働いて西郷さん、板垣、江藤、副島、みんな大激怒。
一方で日本の国民のほとんどが「世界」といったら「日本、唐、天竺」しかないという世界観だった。世界に朝鮮はなかった。明治日本政府はペリーがかつて日本を開国させたのと同じ方法で韓国に対処した。

征韓論は日本の庶民にもわかるように、大河ドラマとかで解りや~すく映像化してほしい。日本史の必須項目なのだから。

そして「佐賀の乱」。この言葉は小学社会科歴史にも出てくるので名前は知ってる。
参議で司法卿から反乱軍の首魁となった江藤、たった一戦の敗北で逃走。西郷さんと共闘するべく薩摩へ。

予想に反して西郷さんは冷たい。ボロボロになって今度は土佐へ渡るも甲浦で逮捕。かつて江藤が整備し日本全国に張り巡らした警察によって、組織のトップだった江藤自身が捕らえられる。
そして旧幕にもなかった暗黒裁判で即刻死罪。しかも士族には適用されない旧法の梟首(さらし首)を強引に復活させて。

司馬は「大久保日記」を嘲ってる。大久保利通、この日本の歴史上稀代の政略家は後世の日本の庶民から嫌われて当然の残忍冷酷さ。国際法に明るかった江藤には予想もできない、まさかの法律無視。この裁判の様子が目を覆いたくなるような酷いしろもの。

明治維新は傑物たちだけでなく、サイテーな成り上がり者も多かった。上手く立ち回った者もいる。義侠心やら義憤にかられて哀れな末路をたどった者もいる…。

この本を読んで現在放送中のNHK大河ドラマの視聴率が悪い理由がわかった。誰も長州なんて好きじゃないし見たくもない。明治新政府で利権を独占。好き放題やりやがった。とくに、井上馨は酷い。山県有朋も酷い。土佐の岩村通俊、河野敏鎌というさらにサイテー人物のことも新たに知った。

江藤新平と言う人は日本近代化の英雄であったのだが、自分の置かれた位置だけがまったく見えていなかった。征韓論に与しさえしなければ佐賀の乱もなかった。

700ページもある本をまとめるのは難しい。以上、サクッとまとめてみた。この本は自分に知らなかったことをたくさん教えてくれた。さすが司馬遼太郎の本は面白い。
こうやって明治政府はできた。江藤を主役に大河ドラマをつくってほしい。

2 件のコメント:

  1. おっ!今ちょうどこれ読んでいるところです!近所の図書館で借りきて。文庫の新装版は上下巻に分かれているんですが、下巻の半分くらいまできました。

    あんまりスカッとする小説ではなさそうだけど面白いです。とにかく悪いやつらが多くて驚く。江藤も前半は爽快感あるけどだんだん行動にイラついてくる。理屈っぽくて人望がないところに若干共感..

    こういう人格的に問題があっても頭のキレる人達が存分に力を発揮できる時代だったからこそ、日本も短期間で近代国家になれたのだと思った。
    伊藤博文とか山県有朋なんて今だったら一瞬で失脚しているでしょうね。

    幕末~明治期の大河ドラマは大抵視聴率悪いですね。権謀術数の世界なので映像にするとあまり盛り上がらないのかも。坂本龍馬ですら映像にしてみたら大したことやってないように見えてしまう。小説の方が合っている時代なのか。

    司馬の小説はやっぱり面白いですね。長いものでも続きが気になってどんどん読み進めていってしまう。司馬のあとに司馬なしと言っている人がいたけど本当にそう思う。

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  2. 自分、新刊のベストセラーとかほとんどまったく読まないのに、かぶってるってすごい!
    江藤の肖像写真、もうちょっとなんとかならないのかってぐらいヤバそうに見える…。

    司馬遼太郎を読み始めてまだ3年ぐらい。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」は全巻買っておいてまだ読み始めてない。「城塞」は中下巻だけ持ってて、上巻だけが手に入らない。

    幕末明治なのに朝ドラが好調なのは予想できなかった!ほとんど見てないけど。

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