2015年7月8日水曜日

市川準 「東京兄妹」(1995)

市川準「東京兄妹」(1995)が昨年、2014年夏についにDVD化された。自分はこの作品の存在をまったく知らなかった。

ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞、キネマ旬報ベストテンで第2位というから、90年代の市川準の代表作といっていいはず。

この映画も小津を意識した作品らしい。兄ひとり妹ひとりの東京での暮らしを市川準らしい眼差しで切り取った作風だと思う。

主演は緒形直人粟田麗。緒形は90年代ゼロ年代の人気俳優だけど近年はあまり見かけない気がする。粟田は最近だと「白夜行」で高良と関係を持つ薬剤師役で出てた。とくに美人ってわけでもなく古い日本人顔。ちなみに自分はこの人をずっと「くりたれい」って呼んでいた。今日になって「あわたうらら」だって知った。人の名前の読み方は難しい。

蝉の音、扇風機、風鈴、ぶたさん蚊取り線香、夏の日本家屋、なぜかブラームスの交響曲第4番第2楽章。寝転がってる兄、外出から帰ってくる妹、なぜかいきなり全裸水浴びシーン。

あれ?1995年の作品にしては画質がぼんやりしてて古いな。まるで昔のVHSテープで見てるみたいだ。なぜ20年間もDVD化されなかったのか?何か問題があったのか…。

冷奴をつつきながらビールの兄、亡き父と母との家族写真、タイトルにつづいて都電の走る鬼子母神前の風景、ここまで3分50秒。今とそれほど風景が変わってないけど、鍋持って豆腐を買いに行ったことは自分はないわ。

神保町の古書店で働く兄、あれ?いつの間にかもう冬の風景になってた。大塚駅から歩いて木造平屋の家に帰る。妹が食事の支度、夕刊を読みながらコタツでの食事。仏壇があって、家具のようなテレビ。開始10分たっても無表情なままのふたり。特に会話もない。まだ何もドラマが起こっていない。

そして妹が高校を卒業して鬼子母神にお参り。また季節がいつのまにか変わってた。通帳を見ている妹。着替えシーンでブラジャー。日本家屋で四季を撮ろうとすると是枝も言ってるように「タナトスとエロス」として若い肉体の映像が必要になるものなのか…。妹は大塚駅の写真現像ショップでバイト。無表情で座ってる。すごく淡々と進む。

商店街で和菓子屋のおばさんから声をかけられる妹、「兄が年頃」ということで見合い写真を見せられる。兄は職場の同僚(広岡由里子)と長く付き合ってるらしい。この女優は市川作品でよく見る。
女に結婚をせっつかれているけど「妹が20歳になるまでは…」と消極的な兄。日本の昔、この環境だと「結婚する」「嫁に行く」は常にそこにある切実な問題だな。

兄は失恋したってこと?あの陰気くさくかわいくもない彼女は失ってもべつにたいしてショックじゃないと思うが…。

古い家の電話は廊下にあるんだよなあ。この映画はまったくケータイが出てこない。1995年の映画にしてはもっと古く感じる。振り子時計のゼンマイを巻くとか。

ある晩、兄は友人(手塚とおる)を家に連れてくる。この男とは写真現像ショップで一度顔を合わせていた妹、やがてこの男と同棲…。この男の顔を見た瞬間から嫌な予感はしていた。手塚、もれなくキモい。仲のよかった兄と妹に亀裂が。兄は独り酒。居酒屋で見知らぬ客に豆腐について語る…。

あえて古いタイプの映画をつくってみたら批評家から高評価だった…みたいな?
画質がよくないのがずっと気になった。いい画質だったらもっと面白く見れたのかもしれない。

2 件のコメント:

  1. 画質はAmazonでも相当叩かれてるようです。
    市川準って90年代はかなり評価高かったんですよね。

    「東京兄妹」はずいぶん前に観てほとんど記憶にないですが、「あしたの私のつくり方」は映画館で観て結構好きでした。
    成海璃子が当時は抜群に美しかったし、前田敦子も妙に印象に残ってます。

    存命中はそれほど市川準のファンでもなかったですが、女優を可愛く撮れる監督って意外にいないんで、貴重な人だったんだなと今にして思います。

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  2. 「あしたの私のつくり方」もよかった。「BUSU」「TUGUMI」「東京マリーゴールド」、20歳前後のアイドル女優映画を撮らせたらどれも傑作。もっと生きてまさみやガッキー、能年、ばっさー、すずも撮ってほしかった。

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