2015年6月15日月曜日

「下山事件 最後の証言」 完全版(2007)

下山事件 最後の証言 完全版(柴田哲孝 2007 祥伝社文庫)を読んだ。ずっと探していてようやく108円で手に入れた。

自分は昭和の未解決事件というやつに関心があって、とくに下山事件はありとあらゆる面白要素の詰まった興味深い事件。
そもそもこの事件に興味を持つきっかけとなった1冊が松本清張の「日本の黒い霧」であったわけで、多くの読者がそうしたように、自分も五反野の現場へ行ってみたりもした。この夏、事件から66年目を迎える。

「下山事件 最後の証言」(2005)は出たすぐに読んだのだが、めちゃくちゃインパクトのある1冊だった。下山事件最大の重要参考人・亜細亜産業の中枢にいた祖父を持つジャーナリストによる執念と渾身の1冊。

「日本の黒い霧」を読んだだけの自分は「下山事件?あー、はいはい、アメリカ諜報機関がやったことでしょ?」という小学生知識で終わっていたのだが、「最後の証言」を読んでこの事件はさらに「闇すぎる」と感じた。

この本をハードカバーで読んだときのことはもうあまり覚えていないのだが、はっきりと覚えているのが、自殺説最大の根拠となった末広旅館の主婦・長島フクが亜細亜産業と関係があったという箇所は「えぇっ?!」と声が出るほど驚いた。この旅館の主人も元特高の刑事。怪しすぎる。

そしてクライマックスの矢板玄氏の自宅でのポン刀突きつけられての単独インタビューのシーン。このシーンのおかげで自分は東北自動車道・矢板インターを通りかかるたびにこのシーンを思い出すようになってしまった。

この本は下山事件に関するすべてのファクターを詳細に教えてくれるのだが、著者が自分の母、大叔母、大叔父に話を聴き、祖父を回想したり、矢板玄からポン刀突きつけられたりとドラマや映画、小説を思わせる面白い読み物にもなってしまっている。下山事件を追うジャーナリスト同士の腹の探りあいと牽制のしあいも印象深い。

自分はこの本をハードカバーの文庫版だと勘違いをしていた。完全版は「最後の証言」出版後に判明した事実を大幅に加筆。内容が3倍ぐらい濃密。買うなら必ずこちらの文庫にしなくてはいけない。

下山事件は関係者と登場人物がとにかく膨大。著者も思わずくじけそうな弱音を吐く
下山事件にのめり込んでいくと、次から次へと浮上する人名に途方にくれることがある。
事件を計画した者、誘拐者、殺害犯、替え玉、連絡員、運転手、死体を運んだ者、捏造された証人、機関車に細工をした者からたった一本の電話をかけた者に至るまで、おそらく加担していた者は数十人に登るだろう。いや、無意識のうちに事件に関わっていた者まで含めれば、その数は数百人を軽く超すにちがいない。
読んでる方も誰が誰だかわからなくなるし、人脈のつながり、偶然の符合?とか読み進めるうちにどんどん迷い込む。この本を読むのにすごく時間がかかった。
今回この本を読んでみて新たに知ってびっくりしたことが、キャノン機関のジャック・キャノン中佐は退役後の1981年にテキサスの自宅ガレージで射殺体で発見されたこと。

鎗水情報の鎗水記者は偽情報をつかませられたどころか事件関係者?血を抜くという殺害方法は731部隊関係者が殺害実行犯にいた?いっぱいありすぎて書ききれない…。この本には白洲次郎の名前も何度も登場。伝記を読んだばかりなのでそっちも興味深い。

「下山事件 最後の証言」は面白すぎた。1回読んだだけじゃピンとこない。これからも手元に置いていつでも開けるようにしたい。

あとこの本を読んでると戦後日本をつくったのは右翼なんだなと気づく。上海や満州といった大陸の人脈は闇すぎる。CIAは秘密工作の拠点に教会を使うのだが、韓国の統一教会の設立には岸信介児玉誉士夫が関係してるってさらっと書かれていてびっくりしたので調べてみたら、フツーにウィキにも書いてあった。だから安倍晋三と統一教会のつながりは当然なのか…。韓国の政権と日本の政財界の関係も闇すぎた。

「日本は戦争が終わって明るい民主国家になりました」的なウソを子供に教えるの、やめてほしい。日本人はいつまでも信長秀吉家康といった戦国武将、幕末の志士ばかりじゃなくて、ウィロビーやキャノン、ガーゲット、シャグノンといったGHQの将校たちや、児玉誉士夫、三浦義一、田中清玄といった右翼、満州にもっと関心を持っていい。「戦後の闇」こそ教科書で教えてほしい。そんな大河ドラマを希望。

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