2015年6月12日金曜日

森田芳光 「阿修羅のごとく」(2003)

向田邦子原作の「阿修羅のごとく」というと、40代後半より上の世代の人にはNHKドラマ版での加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュンの四姉妹が印象深いらしいのだが、自分が見たのは森田芳光(1950-2011)監督による2003年の映画版(東宝)。

映画では大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子が四姉妹を演じた。ドラマ版で次女だった八千草薫が四姉妹の母親。この作品の映画化はなかなか野心的なチャレンジ企画。家族というおかしくも哀しい不思議な存在。

自分は以前に向田邦子を2冊ほど読んでみたことがあるのだが、夫婦関係とか描いてるので、コドモな男にはとても歯が立たないと思った。おそらくオトナの女性じゃないとわからないことだらけ。向田邦子の魅力がいまひとつよくわからない…。
で、この映画を以前見てみたことがあったのだが、退屈すぎて途中で見るのをやめてしまった。

だが、公開中の「海街diary」の宣伝番組などで綾瀬はるかと長澤まさみのちゃぶ台でのケンカシーンなどを見るにつれ、「阿修羅のごとく」の大竹しのぶと黒木瞳のシーンがデジャヴってきた。もう一度ちゃんと「阿修羅のごとく」を見返す。

図書館で司書として働く三女滝子はたまたま父が若い女性とその子どもと一緒にいる姿を目撃。興信所に頼んで父の身辺を調査。
次女巻子(黒木)「なんなのよ?話って」
三女滝子(深津)「お父さん、面倒みてる人がいるの。」
長女綱子(大竹)「おんな?w」
三女滝子(深津)「男が男の面倒みるわけないでしょ!(怒)」
次女、長女「まさかぁ、うちのお父さんがwww」
四女咲子(深田)「70のじじいだよ。お父さんが老いらくの恋?やだぁw」
お父さん(仲代達矢)が外に愛人を持ってる疑惑に揺れる四姉妹コメディーなのだが、やっぱり退屈しまくる。

昭和50年代が舞台になってるので、やっぱりいろいろとユーモアのセンスがおじさんおばさん向けっぽい。今の40代に比べるとかなりおばさんっぽい。うな重を交換しようと無理強いしてひっくり返すシーンとかちょっとわざとらしいシーンが多い。四女が母親に彼氏を紹介するシーンとかも面白くない。中村獅童が変な声とキャラすぎてイライラする。

四女・深田恭子、この当時は新進気鋭の若手女優。この面子の中に抜擢されたということは期待も大きかった存在のはず。独りだけ声が低くてぽっちゃり。昭和姉妹の中で四女だけ現代人が紛れ込んでる感じ…。相当に年の離れた姉妹だな。

深津絵里は名女優だな。いつ見ても感心する。生真面目で固くて、ビビリだけど意外に頼もしい三女を見事に演じた。
小林薫部長の秘書役で木村佳乃が出てるのだが、これがかなり妖しい余裕の笑みを浮かべてて不気味。

この映画では小林薫、黒木瞳夫妻の娘役で長澤まさみが出演しているのだが、揚げもちボリボリ食いながら階段を降りてくるシーン、セーラー服で朝食シーン、正月に弟と(なぜかロボコンとつぶやきながら)オセロやってるシーン、「おばさん、結婚生活どう?」って深津にきくシーンの合計4シーンに出演。
「海街」の是枝監督のインタビューなどをまだそれほど読んでいないのだが、おそらく「阿修羅のごとく」四姉妹の姿が少しはこの「海街」四姉妹に反映しているのではないか?と思った。白菜漬け縁側お茶シーンとか、日本家屋と四姉妹の組み合わせは小津や成瀬だけじゃなく、向田邦子も意識してる?

「海街」宣伝番組で撮影現場シーンをちょっと見たのだが、そこで「おならラップ」なる遊びが現場で流行っていたそうだ。「阿修羅のごとく」で、母・八千草薫が倒れて四姉妹がうなだれているとき深津が母が口紅を塗った後に唇で「ぷぱっ」ってするしぐさと音をマネるシーンがある。すると長女も次女も「プパップパッ」って始める。ええっ?!ひょっとするとこのシーンと「おならラップ」は何か関係がある?って思った。詳細は不明。

海街四姉妹キャストで12年後あたりにそのまま映画化できそうな感じだ。

この映画を見ていて知ってる場所が出てきた。黒木がうな重の出前自転車と接触する狭い路は文京区本郷の徳田秋声旧宅の前だ。

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