2015年3月14日土曜日

加藤泰 「江戸川乱歩の陰獣」(1977)

自分は小学生のときにポプラ社の「少年探偵団シリーズ」は何冊か読んだ。昭和を感じた。
だが、江戸川乱歩には大人じゃないと読めない作品が多いことも気づいていた。小学生のときに「D坂の殺人事件」とか読んでみても理解できないことがあった。それは「SM」だw SMって大正時代からあったんだな。

江戸川乱歩の映像作品はまだ1本も見ていないので、今回見てみることにした。1977年の加藤泰監督による「陰獣」。

あおい輝彦、香山美子、加賀まりこ、野際陽子、若山富三郎と豪華スターの共演。あおい輝彦は「犬神家の一族」でスケキヨ。若山富三郎は「悪魔の手毬唄」の磯川警部。

探偵小説作家・寒川(あおい輝彦)と本田記者(若山富三郎)のコンビはコミカルで面白い。

小山田夫人(香山美子)が主人公の前に登場するときから妖艶すぎて怖い。この時代の妖艶なお色気とはこんな感じだったのか。主人公、下心まるだし。昔は冷房が無いので半端なく汗かいてる。

香山美子という女優は自分はまったく知らなかったのだが、wikiで調べてみたら「こち亀」の両さんの憧れの女優ってマジか?!w 「陰獣」に出てくる女の人はみんないっちゃってる。小山田氏が英国から連れてきたヘレンという女性は囲碁を打つ音を聞くだけで官能的表情になってしまってる。SMって本当にこんな感じで「ぶって~ぇ」とか言うのか?理解不能。

それにしてもこの映画に出てくる浅草六区などの大正昭和の東京がすっごく雰囲気が出てる。ま、この映画が作られたころには浅草六区のかつての賑わいを知ってる人はまだまだ多かった。どうりで細部までリアル。これからの世代が戦前の風景を作ろうとしても作り物感が出てしまう。浅草の見世物小屋とか早慶戦のラジオ中継に熱中してる様子とかとても興味深かった。

とくにサイコーなのが銭蒸気(渡し舟)乗り場での藤岡琢也と菅井きんのやりとり。面白すぎた。
今の水準で見てもとてもレベルの高いコント。今も昔も年寄りと意思疎通するのは難しかったんだな。この二人は死体を発見するだけのために登場。何度見ても面白い。

この話は見始めて早々に「探偵作家・大江春泥」の正体が誰か?に焦点が注がれる。ミステリーとしても素晴らしい出来。この映画がつくれれたころに市川崑の金田一シリーズも作られた。「陰獣」も負けてない素晴らしい大作。面白かった。傑作と言っていい。SMは意味わかんないけど。

PS. 自分が「陰獣」という言葉を知ったのは大好きなバンド「人間椅子」の代表曲に「陰獣」という曲があったから。「いんじゅぅ~~ぅぉ♪」w 自分はまだ一度も「人間椅子」のライブに行ったことがない。行きたい。CDもぜんぜん見かけない。欲しい。
ベビメタの神バンドを最初見たとき「人間椅子」かと思ったw

2 件のコメント:

  1. 乱歩って、長編を雑誌に連載する場合など全然先のことを考えずに好き放題に書いていたそうです。だから結末が無茶苦茶になる。「陰獣」は完成度が高い。ミステリのオールタイムなどで、乱歩作品で上位になるのはたいてい「孤島の鬼」と「陰獣」。「孤島の鬼」はフリークスと同性愛、「陰獣」はSM。どちらも、乱歩の個性。ほかの作品にはグロもありますが・・・。
    乱歩の小説を映像化して成功するのは難しい。加藤泰以外には2008年にバーベット・シュローダーが日本人を使って撮った「INJU 陰獣」があることを知った。DVDも出ていてAMAZONのレビューも好評。中古でも探して観たいです。

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  2. 「INJU」の予告編見たけどさらにグロそうだ。京都が舞台になってるのと、女優さんがイメージと合ってるのかどうか。自分もシュローダー版を探そうと思う。

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