なんの予備知識もなくこの本を手に取った。「晩年」というタイトルながらこれが昭和11年に刊行された太宰の第1作の短編集。
20代なかごろに書かれたもの。太宰は21歳のとき非合法運動に関わりその後に脱落。疲労しきって心中事件を起こして相手女性のみ死なせている。そんなこんなでこの作品集が「晩年」。最初で最後のつもりだったのかもしれない。
「道化の華」という作品が一番重要だと感じた。自身の心中事件を、入院中の大庭葉蔵という人物を主人公に実験的前衛的な方法で語らせている。書いている自分が自分に突っ込み、小説としてのプランを実況しダメ出し。読んでいて戸惑う。
「思い出」は太宰版の「中学生円山」といった感じ。たいていの中学生男子はヘンタイといってさしつかえないが、太宰も完全にヘンタイ。ただ、この人は津軽金木村の名士の六男として生まれた郷里の期待の秀才。いつも女子の視線を気にしている。
自分は金木町の太宰の生家を訪れて太宰のことはわりと知っていると思っていたが、この作品はさらに津軽での太宰のことを知るために重要。「猿面冠者」も小説家となる少年太宰を知る上で重要。
「彼は昔の彼ならず」はまるで落語だ。絶対に家賃を払わない店子と太宰がモデルっぽい大家の話。お金がないのに絶対に働こうとしない男と、まあ働く必要がないけど小遣いが減って困るだけの大家の交流。読んでいてどうしようもない感覚になる。
心中事件とパビナール中毒、「老人ではなかった。二十五歳を越しただけであった。けれどもやはり老人であった。」(逆行)というようないたたまれなさ。ほとんどの作品がよくわからない。天才の作品なら仕方がない。凡人には理解が及ばない。まあ友達にはなれない。
「陰火」を読んでも、この人は幸せな結婚ができなかったと思い知る。
その他の作品は読んでいて苦痛。「地球図」「猿ヶ島」以外は読み飛ばしてかまわないとも思った。
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「道化の華」はメタ小説とでも言うのでしょうかね。
太宰の自嘲とナルシストぶりが際立つ。メタ部分を除くとけっこうお気楽小説?
タイトルも「道化」だからね。
青森の作家だと太宰よりも寺山修司に魅かれます。
天才歌人だと思っていたが、学生時代に俳句では一度も勝てなかったライバルがいた・・・
そんな記事が読売新聞に載っていました。
太宰も青森中学校や弘前高等学校時代に、そんな存在がいたとしたら面白いけど。
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遺族がこれ読んだらどう思うんだろう?不謹慎じゃないかとも思うけど、無理に明るくしてないと何もできないとも思う。
寺山修二少女詩集って文庫本読んだことあります。相当に変わった物の見方をする人だと思いました。
青森って自分だとSing Like TalkingとSupercarのイメージ強いですね。